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グラン・トリノのH4Y4T0のレビュー・感想・評価

グラン・トリノ(2008年製作の映画)
4.0
タイトルにある『グラン・トリノ』とは、主人公ウォルトが引退前に勤めていたフォード社に1972年から1976年の間に生産された車種の名称。
ニック・シェンクが手掛けた脚本にイーストウッドが監督・主演・プロデューサーに名乗りを上げ、実質的に俳優業最後の出演作。

序盤は妻に先立たれ、家族にも見放され、外界との関係を全て断ち切ろうとする孤独な老人ウォルトに同情してしまったが、中盤あたりから頑固で強情で他人を毛嫌いする意地悪爺さんに嫌悪感を抱いてしまった。
ところが隣の家に住むモン族の少年タオとその姉スーとの交友関係を経ていく内に、次第に心を開き始め家族や友人とも真摯に向き合うようになる。
相変わらず無愛想で他人行儀な一面もあるが、時折漏らすジョークや他人を思いやる気遣いに“人間らしさ”を感じた。
またタオ自身も、徐々に大人へと成長していく過程で自信と“人間らしさ”を身に付ける。なんだかんだ言っても、幾つになっても男同士の友情は美しい。

物語の中心人物はウォルトとタオだが、本作はヤノヴィッチ神父抜きでは語れない。
度々登場しては助言を残し去って行く、言うなればキーマン的な存在。
というより登場人物ほぼ全員が常に暴言を吐き散らかす一方で、唯一まともな人物に見えるのは彼だけ。
街のゴロツキ共や床屋の店主・マーティン、ウォルトの身内ですら涼しい顔して平然と人の悪口を言い放つ。
イーストウッド監督作品ではお馴染みの演出だが、本作の舞台ミシガン州デトロイトは「治安の良いアメリカ都市ランキング」では最下位、つまり最も治安が悪く「危険なアメリカ都市ランキング」では堂々の1位。
お国柄こそあるものの、道理で皆荒んでるわけだ。

あまり御託を並べると誤解されそうなのでここらで割愛するが、最終章は正に『男の生き様』をカッコ良く描いたラストとなっており、あっと驚く感動が待ち受けています。
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