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グラン・トリノのTPのレビュー・感想・評価

グラン・トリノ(2008年製作の映画)
4.5
 大まかに分類すると犯罪ものなのだが、同じ監督作品「ミスティック・リバー」のような重々しさはなく、また、わかりやすくストレート、善悪の描き方もくっきりし、時にダーティ・ハリーのセルフ・パロディなどユーモアを交えながら、ストーリーで見せようという姿勢が清々しい。

 モン族の姉弟に絡むチンピラに対し、凄みを見せるウォルトの様はまさにダーティ・ハリーことハリー・キャラハンを彷彿とさせるが、ラストの選択はまったく逆である。
 死期が近いことを悟った老人がとる行動として、何が可能で最良なのか、その決断は超人的な強さをもったハリーでは到底なしえなかった選択で、頑固一徹(というか息子との接し方がわからなかったこと、朝鮮戦争で心に負った傷により殻ができていただけで、実際友人は多いし、会話にユーモアもある)だったウォルトがだんだんと心を開いていく過程が丁寧で苦しいところがないために、大きな感動を呼ぶ。

 犯罪映画でありながら、重くなりすぎることもわかりづらくなることもなく、イーストウッドのアクション・スター時代を良く知る、同時に年を取っていったファンに若干の寂しさを感じさせつつも、最良のストーリーをもつ映画である。映画の中のウォルトの成長だけでなく、その監督であり主演者であるイーストウッドの生き様、思考の変化まで感慨深く感じさせてくれるというなんとも特異な映画である。

 しかし、イーストウッドのなんとかっこいいジジイであることか!
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