YP子

ダウン・バイ・ローのYP子のレビュー・感想・評価

ダウン・バイ・ロー(1986年製作の映画)
5.0
1986年公開の自主映画。
Down by Law = 刑務所のスラングで「親しい兄弟のような間柄」とか「気が合う仲間」っていう意味。

監督・脚本、ジム・ジャームッシュ。
シンガーソングライター、トム・ウェイツの初主演映画。
(トム・ウェイツは自分の楽曲「ジョッキー・フル・オブ・バーボン」「タンゴ」も本作に提供)


主演のトム・ウェイツ演じるザックが出会ったジャックとボブとのお話。
なんともまたジム・ジャームッシュ風!
この感じ、癖になるんだよね。すごい。
今回もロードムービーっぽい感じで話が進んでく。

舞台はニューオーリンズ。

知らない場所で、知らない人と出会い、生活を共にする。
ザックとジャックは分かりあえず衝突してばかり。かと思いきやボブと3人でカードゲームしたり。
ボブはボブでザック&ジャックコンビの間を上手いこと取り持っている。英語が片言なのに(笑)
なんか今回の作品は前作「ストレンジャー ザン パラダイス」とか「パーマネント バケーション」とはまた違ったシュールさと、笑いのツボがあった!
なんかニヤニヤしちゃう場面が多かったな。
いい感じ。
この感じはきっとボブ役のロベルト・ベニーニの本業がコメディアンだからだね!

この映画を、つまらないと感じる人もいるかもね。
あのジム・ジャームッシュ独特の長い間とかさ。
そこまで多くない登場人物で淡々と進んでいく話とかさ。

だけど、好きな人はすごく好きだよね!これが。

私はこのジム・ジャームッシュ独特の長い間が好き。
言葉では言いづらいけどあの「間」や「映しだされた風景」を感じたり見たりするとこの映画の一部分に自分もなって、なんか無理なくのめり込めんるんだよね。
「おぉぉぉーーー!」っていうような感情にはならないけど、心地よく惹きつけられる感じ。

白黒なところも好き。
これは、白黒で良かった。あの湿地帯とか特に。きれいなんだよね。


あそこの場面は有名だよね。
「I Scream,You Scream, We All Scream for Ice Cream!」
ここ聴きながら私の頭には榊原郁恵の「夏のお嬢さん」も一緒に流れてた。あはは。
あと、ボブのビリヤードの話、あれはロベルト・ベニーニのアドリブらしいね!すごいね。


今回も知らない土地に来た異邦人が登場し、さまよう事多し。
こういうロードムービー感、すごい好き!
行き当たりばったりなところもいいし。知らない者同士から芽生えた友情とか。
けなしあったり殴りあったりしたかと思えば、同じ喜びをわかちあったり。ジョークを言いあったり。
その友情がまさに「ダウン バイ ロー」だったんだね。

そして、そこからのあの結末。クール過ぎるでしょ!かっこいい。
詰まってる。人生においての人との出会いや別れの感情が。
こうなれたらかっこいいな!って思うし、友情はこうであってほしいな!っていう憧れすらもった。
私自身、こういった別れが多いから共感もした。


ジム・ジャームッシュって、ほんとラストが毎回かっこいいよね。

最高。



ストーリーの内容はこんなにも薄いのに、ここまでかっこいい作品にするなんて!
(この脚本は2週間で書いたらしいね)


前作に引き続き、やっぱりジョン・ルーリーの内股が気になりつつも、だんだんそれが彼の象徴のように思えてきていい感じに見えてきた(笑)


いやー。大好きだジム・ジャームッシュ。
主役の彼がトム・ウェイツってとこがグッとくるね。
映像も音楽も素晴らしい1本です!
YP子

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