イロカワ

おわらない物語 アビバの場合のイロカワのレビュー・感想・評価

4.7
 トッド・ソロンズ監督は胸くそ悪いコメディばっか作る監督ではあるけど、映画の表現にしっかりと挑戦している真面目な監督だと思う。
 今回の主人公はアビバという人物なのだが、俳優が途中でコロコロ変わっていく。キャラクターや性格は同じなのに、シーンが変わるごとに年齢も人種も性別も違う人間がアビバを演じていく。そのことについて映画の中では特に説明はない。ただしただのアヴァンギャルドという訳ではないと思う。
 この映画はロードムービーなのだが、アビバは旅の途中で色んな事を経験していろんな変化が起こる。ロリコンの中年男性にレイプされたり、孤児を集めているキリスト教原理主義っぽい変な集団に保護されたり、警察に包囲されたり色々起こる。彼女の変化を映画的に表現する一つの方法として俳優が変わっていったのだと思う。
 おばさんみたいな気分の時もあるし、女の子みたいな気分の日もあるし、男の子みたいな気分の日もあるし、黒人の女性みたいな気分の日もある。要するにそういう感じだと思う。
 胸くそ悪いし、問題は解決していないがそれでも生きている事に前向きになるかもしれない映画。トッド・ソロンズ監督の作品の中では珍しく主人公の事を好きになれた。
イロカワ

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