スペインの小さな村、巡回映画『フランケンシュタイン』を観た6歳の少女アナ。
彼女は姉のイサベルに、フランケンシュタインは聖霊で、実際に村はずれの一軒家に隠れていると聞き、それを信じ込んでしまいます。
ある日、アナはその一軒家へ行くと……
大人と子供の狭間で生まれた世界観、現実なのか空想なのか区別のつかないアナの目を通した世界…
アナが目にするものはすべてがreality…フランケンシュタインも姉の死(んだ振り)も…
アナと対比するように姉のイサベルの描き方もとても上手いです。彼女は子供ながらの残酷さも残しつつ、大人の現実の世界も少しづつ歩み始めています。
猫の首を絞めるシーンや自分の血を口紅のように塗るシーン…
圧倒的な"静"の世界が広がり、死を想起させるようなモチーフやメタファーが随所に…ドン・ホセ、毒キノコ、汽車のレール、焚き火、ハチの巣柄の窓ガラス…そしてフランケンシュタイン…不吉さや、戦争の傷跡を物語ります。
ストーリーもさる事ながら、映像も見事!ほとんどが固定カメラによるもの…素晴らしい構図のシーンで構成された絵本をめくっていくようです。
色や光をうまく使い影絵のように映る場面も多く見られます。"静"を意識して、あらゆるものを排除した作品ですが、ピアノやオルゴール時計、生活音、牧歌的なBGMも素敵。
そして忘れてはいけない、アナの大きな瞳!吸い込まれそうなほどの美しさです。
ラスト…精霊に会えると信じ、「私はアナです」と夜の暗闇に語りかけるシーンは胸にグーッときます。