ベティー

アイム・ノット・ゼアのベティーのレビュー・感想・評価

アイム・ノット・ゼア(2007年製作の映画)
2.0
偉大なるボブディランを6人の俳優が演じるという、ファンなのでちょっと気になっていた映画。
ちょっと、というのが、どうもがっかりしそうな予感がしていたのですが、、これはきびしかったです。

ボブディランとは、、、ポピュラー的音楽の歴史を作り上げてきたいわばロックの偉人的ミュージシャンですね。有名な割に本人のヒット曲がすくない方です。
初期はフォークシンガーのウディーガスリーや弾き語りスタイルのブルースシンガーに憧れてデビューしたものの振るわず、その後当時流行りのプロテストソング(政治や社会問題をテーマにした歌詞)でブレイク。
しかし定着したフォークシンガーとしての地位をあっさり捨てて、バンドスタイルのロック的な曲を出すようになるわけですが、これがまた大ヒット。
しかし、このままロック路線でいくかと思いきや、客層が正反対のカントリーアルバムを出したり、突然トレードマークのダミ声をやめてストレートな声で綺麗にうたったり(タバコをやめたせいで声が変わったとか適当すぎるうそをついていたらしい)キリスト教テーマのアルバム立て続けに3枚だしてさすがにファンが離れたりと、まさにIm not thereな方です。
このタイトルは的を得ていますね。ファンになったらもうそこに期待していたボブディランはいない。せっかく獲得したファンの期待を一身に裏切り、あっさりと次の世界にいってしまう。しかし、またそれが受け入れられるという、とんでもない天才肌中の天才です。

すみません、映画の話でした。
これなんですが、、、好きでない人には退屈で長すぎるしストーリーもメリハリがなくなんだかよくわからないし、ファンには雑な再現と芸術性のどっちつかずなスタンスに居心地の悪さを与えるだれにも得しないような作りに感じました。
唯一本人の曲が長めで入るのはよかったです。選曲も結構好きです。ああ、ストーリーはウディーガスリーの少年の話だけは悪くないかも。

なによりも厳しかったのが、ミュージシャンを扱った映画なのに役者が演じる歌が下手。皆恐ろしくパワーがない...役者本人が歌っているのかな?プロのミュージシャンに差し替えればいいのに。本人の歌が流れるとホッとします。
昨日たまたまローリングサンダーレビュー期のアルバム聴いていたのですが、特に若い頃の声の張りとか抑揚の感じ本当にすごい。正直バンドの音とか低音全然出てないし、ギターも軽いし一体感もないし全然一般受けしない音だけど、それでもボーカルだけはすさまじいエネルギーを放ってる。全盛期のボブディランの勢いと声の表現力に並ぶミュージシャンってあんまりいないと思う。高齢期の渋さの極みも好きですが。

しかし、自分の好きな曲を別のミュージシャンが歌ったりするのを聴くのは好きなんですが、この映画だと逆ですね...魂の抜けたカバーを聴くと、製作者は本当にファンなのか?っていう疑問すら湧いてだんだん腹が立ってきました。Ballad Of Thin Manとか、ちょっと聴くに堪えないレベルでおどろきです。こんなんでいいのか?
演技的には、役者があえて本人の真似をしていないところはありかもなと思っていたのですが、ケイトブランシェット演じるHighway61あたりの頃だけはなぜか服装から仕草から完コピ風で、そこだけがすごく浮いてしまっていて、全体のバランスがガタッと崩れてしまっています。
しかも当時の本人のほうが男前すぎて残念なコピー感がすごい。完コピするにしても、あの時期はだめだろ。。本物がカリスマオーラ出過ぎだからなあ。だれが演じても無理だと思う。。ほかにもいろいろと全体的に雑、雑コラ感がすごいです。
映画的にも抑揚がなく映像も特にはっとするものもなかったし厳しい感じでした。
ファンなら見ても損は、、、私には無理でした。

とにかく興味がある方は絶対に曲を聴くことをお勧めします。
勝手にお勧めするとすれば、ロック好きな方なら、1990年のunder the red skyなんかよいです。ボーカルはだいぶ枯れてますが、それが逆に味わい深いしアルバム自体の音圧高めで全体的に現代のサウンドで聴きやすい。スラッシュとかスティービーレイヴォーンが参加してて豪華。
もっと若い頃なら、1966年のロイヤルアルバートホール(BootlegSeries Vol.4)がいいかも。弾き語りとバンドと両方入っているのでお得です。