やぎ

トゥモロー・ワールドのやぎのレビュー・感想・評価

トゥモロー・ワールド(2006年製作の映画)
5.0
この映画の舞台は赤ちゃんが生まれなくなった世界。
ただ老いていき、ゆっくりと世界の終末を待つ世界は、希望の欠片が微塵もなく灰色だ。新生児が生まれない、という事がこれほど世界に停滞をもたらすものかと驚く。
最後の朧気な希望に至るまで徹底した世界観の作り込み、そして新生児誕生がもたらす静寂の描写が素晴らしかった。


マークフィッシャーの本を読んでいたら、この映画が出てきた。彼はこの映画に置ける「子供」を「新たなものを創造する力」と解釈する。つまり、「新生児が生まれない世界」は「全く新しいモノやコトがおこらない、既製品とコピーが溢れた世界」だということが出来る。フィッシャーはこの終末に向かう世界においても、資本主義が続いていることに注目し論を展開する。「資本主義の終わりを想像するより、世界の終わりを想像するほうがたやすい」という言葉を引用しながら。
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