半兵衛

血斗水滸伝 怒涛の対決の半兵衛のレビュー・感想・評価

血斗水滸伝 怒涛の対決(1959年製作の映画)
3.0
今や忘れられてしまったものの、かつては盛んに取り上げられていた題材『天保水滸伝』を全盛期の東映京都撮影所で取り上げたオールスター映画。

かつて東映京都ではこういうオールスター作品の場合主要出演者の出るシーンと時間が均等になるよう配置されており、誰かが余計に出番があると別の出演者からクレームが来るという伝説があったが、実際見てみると時間はさておき各々のスターに均等に見せ場が用意されていて誰かが優先して目立っている印象は無い。そういう意味では裏ではプロデューサー、脚本家、監督が色々なスターの使い方に頭を悩まされながらそれぞれのドラマを作り上げていったのだなという苦闘ぶりがあったことが想像され、頭の下がる思いに。そうした結果、スターの見せ場を堪能できるオールスター映画の醍醐味が凝縮した一作になっている。

ただ単にスターの出番を作っているだけではなく、それぞれの個性を生かしたドラマにしているのも見事。押し出しの強さが主役の親分役にぴったりな市川右太衛門、好きな幼馴染みと稼業のことで苦悩する色男東千代之介、悪人の親分との義理と彼らが行っている非道に悩まされる中村錦之助、いなせな盗賊の大川橋蔵、美人芸者で歌も踊りも達者な美空ひばり…。道化役を演じる堺駿二、悪人を憎々しく演じる進藤英太郎&月形龍之介といった脇のサポートもさすが。珍しく悪人ではない山形勲、薄田研二も見所。

個人的には麻雀仲間であったという片岡千恵蔵と進藤英太郎の、片や善人片や悪人の丁々発止の駆け引きをノリノリで演じている姿に思わずニヤニヤして見てしまった。あとこういうオールスターものでも芝居を怠らず、親分の代わりに渡世人の集会に来た場面で「自分は何て場違いな所に来てしまったのだ」という演技を巧みに表現する中村錦之助の役者魂に感服する。

ラストは勧善懲悪のわかりきった結末ではあるが、楽しい時代劇を見た満足感は残る。

ちなみに中村錦之助と若山富三郎というレアな組み合わせが見れる作品でもある。
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