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歩いても 歩いてものmaiのレビュー・感想・評価

歩いても 歩いても(2007年製作の映画)
3.9
優しそうなおばあちゃんも、明るくって面白いおばさんも、ちょっと頑固だけど悪い人ではなさそうなおじいちゃんも。
みんなやっぱり「人間」なんだ…と思わされました。
一見すると(特別にってわけじゃないけど)普通に会話もできて仲の良さそうな家族。そんな家族にも、やっぱり瞬間瞬間で歪みがあります。
子供の死や夫の浮気…それがひっそりと影を落としている部分が、ふとしたときにパッと家族の前に顔を出します。
大丈夫そうに見えて、実は大丈夫じゃない。
子供の死に対して諦めがついて吹っ切れたわけではなく、そうするしかなかったから…と感じさせる母親の「思い出してもらわなきゃ」と淡々と語る姿。
母親と仲が良いけれど、その裏、現実的な「家をもらいたい」という欲を見せる長女。
浮気を決定づける出来事の時に流れていた曲をかける母親と、それを聞く父親。

冒頭で散々「映画的な家族」といった感じの「いかにも」な姿を見せておいて、このひんやりとするような会話や出来事を後半にばんばん入れてくるのはズルい…!
ドラマチックだとか劇的なラストだとかの派手さはないけれど、ゆっくりと是枝さんのテンポに引き込まれていく感じがたまりません。会話で魅せるという、役者の力量も試されるような…そんな完成度の高い映画でした。

樹木希林さんってやっぱりすごい役者だし、原田芳雄って喋らなくっても登場が多くなくっても、出てきた瞬間にやっぱり圧倒するような存在感あるなぁと思いました。
お二人とも「印象に残る」が真っ先にやってくる俳優さんだなと。
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