Time

アメリカン・グラフィティのTimeのレビュー・感想・評価

アメリカン・グラフィティ(1973年製作の映画)
3.0
こいつは何もない。
ほんとうに何も無い訳じゃないが、些細なことが一晩で僅かに移り変わるだけ。些細なことが悪い訳じゃない。ただ映画にするには値しない。正確に言えば映画にするには物足りないとされていた。
ただ思い出すべきだ。自分たちにあの青春はあったのだろうか。もしくは可能だったのかと。そして戦争を知らない子供だということを。
青春てやつは取り戻せない一瞬の閃光のように表現される。または限界を作らないなら永遠だという見方もある。しかし国を越えて都市を見て、時代を鑑みれば違う星の話のようだ。それこそ映画を観た疑似体験こそが、そのものだったりする。
本や漫画で同じように体験できるだろうか。やっぱりそこには違和感がある。
それはタイトルにもあるように「グラフィティ」だからなんだと思う。フィルムに焼き付いた“落書き“、書き殴られた青春。
こんなにも遠い甘酸っぱさに何を思えばいい。自分を重ねるほどに近くはないし、無視できるほどには離れていない。
一つ明確に素晴らしいのは、「何も言わない」ってことを言ってること。過去を学ばせることも、快楽を与えることも強要しない。
最後は未来を示してくれるんだけど、そこは少し残酷な現実だ、主だった人の5人に2人は戦争で命を落とす。それは当時のアメリカのありえる統計の一つなんだろう。
過去の一瞬が輝かしい栄光に変わるには、ほろ苦い未来が必要だ。
青春の味覚ってのは恐ろしい。知らない味じゃないだけに。
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