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アメリカン・グラフィティのgregのレビュー・感想・評価

アメリカン・グラフィティ(1973年製作の映画)
4.3
昔々、まだロンハワードに髪があった頃‥

"American Graffiti"

僕自身がgraffitiという単語を知ったのは去年のこと。 イギリスのインターナショナルスクール的なところでバンクシーの作品やそれに関するBBC newsをウィリアムHメイシーばりの浮浪者感を醸し出した教師に教えられたのが始まり。(その教師はベビーメタルときゃりーぱみゅぱみゅを見せてこれが典型的な日本人だと言ったり、中国人の目の前で毛沢東の両目にぺけがついた作品を見せてニヤニヤしたりと、自由な人でした。)

閑話休題。映画の内容はバンクシーのグラフィティはあまり関係ないです。高校三年生の終わり、人生を決めてしまう瞬間の話です。瞬間という言葉の通り、この映画はたった一夜の群像劇で構成されています。

メインに四人のキャラクターがいるのですが、その中の高校三年生の二人ははそれぞれ
「自分は故郷から離れて暮らしていけるのだろうか」
「こんな田舎ささっと捨てちまいたい」
という鬱屈を抱えています。
卒業式も終わり大学へと旅立つ前夜、彼らは最後の夜遊びへと出かけます。

日本ではありえない高校生のドライブ、ローラースケートをはいた定員のいるファストフード店、車でのガチレース‥ うん、否応なく憧れてしまう。

そんな彼らのラストナイトを彩るのは、リスナーの要望に応えて選曲するウルフマンという男。僕は彼の存在こそこの映画の肝だと思った。あるシーンで彼が二重の意味で夢を与える男だということがわかるシーンがあるのだが、それがこの映画のベストシーン。
シングストリートではRock n Roll is a risk とあるように、彼により与えられた夢を、ある者は叶え、ある者は諦める。そして、全てにけりをつけ、責任を持ち、決断をする。

永遠かのように思われた夜は明け、彼らは自らの決意のもと行動する。ラストで観客には彼らのその後が提示されるのだが、青春の儚さとベトナム戦争を迎える意味とがあいまって、切なさを際立たせる。
ベトナム戦争というと僕らとは関係ないかのように思えるが、非常に普遍的な話だ。事実、アメリカンティーンというドキュメンタリーではバスケットボール部の少年が今日スカウトが来なければ軍に入れると父親に宣告されるシーンがある。軍に入れば、彼はイラクに赴いていたのだ。こんなことが本当にあるんだ!という残酷な話だが、要はこの切なさは時代を超えた普遍性がある。

青春なんて興味がないという人も、今では映画だけではなく顔までも面白くなってしまったロンハワードの在りし日の髪‥ではなく姿も見れるのでオススメです。
素晴らしいドキュメンタリーのアメリカンティーンも合わせてどうぞ‥



追記
不良と小生意気な少女という組み合わせは最高ですね。
greg

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