COZY922

マイ・フェア・レディのCOZY922のレビュー・感想・評価

マイ・フェア・レディ(1964年製作の映画)
3.6
『花売りは身を売らない。でもレディになったら身売り』痛烈な皮肉と、好きな男性に1人の人間として認めてもらいたい気持ちとが目一杯こもったひとことだった。と同時にその言葉にイライザの成長を感じたシーンでもあった。

映画はインターミッションを挟んで2つのパートから成る。最初のパートは階級社会の低層にいた花売り娘のイライザが適切な言葉使いとマナーを学びレディへと洗練されていくシンデレラストーリー。第二のストーリーは変化を遂げた彼女の心理的欲求と彼女を教えたヒギンズ教授の価値観のぶつかり合い。ちょっと偏屈で女性に対して尊大な態度だった教授が、イライザとの諍いを通じて彼女への気持ちを自覚する。

前半、オードリーには似つかわしくないダミ声やスラングも彼女がやるととってもお茶目だし、可憐な美しさや華やかな衣装などは見ているだけで楽しい! 後半は一転して、階級意識やジェンダー格差が強い当時の英国の世相を反映するかのような社会派風味を感じた。

通して見ると、イライザを教育し支配したような気分になっていたヒギンズが、いつのまにか彼女に気持ちを支配されていた、というラブストーリーなんですね。教育の持つ力や重み、階級社会への皮肉などを散りばめつつも、自分にないものを持つ相手に惹かれていく、少しコミカルで、ハッピーな中にも少し切なさの香る恋。

惜しいなと思うのは歌が吹き替えなことと尺が長過ぎること。120分程度に収めてくれると観やすいのになと思う。

舞踏会もいいけど、なにげに、イライザのひどい発音を教授が1人しんみりと蓄音機で聞くシーンが好き。
戻ってくれて嬉しいくせに、嬉しさや折れた態度を見せたくない教授が帽子で表情を隠して『上靴はどこだ?』といきがるラストシーンもいいな。子供っぽくて不器用だけど微笑ましい。こういう、大っぴらに素直にはなれないことって男に限らず女にもあるよね。
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