そう

ゴジラVSビオランテのそうのレビュー・感想・評価

ゴジラVSビオランテ(1989年製作の映画)
3.9
面白い。脚本も撮り方も特撮も。爆薬の量はバブルを感じさせるが、撮り方が上手いのでちゃんと映画の世界に入り込める。役者の芝居はやや80年代か。途中途中で部隊配置図のような図面が登場する。それも当時のコンピューターグラフィックスのような画面で。これがゲーム感を醸し出すので見ていて楽しい。かなり音楽が鳴り続けている印象だが、メインテーマが流れたときにはしっかり痺れる。流れる場面はゴジラ初出時や戦闘開始時と決まっており、流れるタイミングは完璧に近い。だから痺れるのだろう。これは重要で繊細な仕事だと思う。白神博士の常に憂いを帯びた佇まいが素晴らしい。未希役の美少女も凄く良かった。怪獣映画ではあるが主人公はあくまで人間たちであり、「本当の怪獣はそれを生み出した人間だ」という博士の台詞が象徴するように『人間という怪獣を描いた怪獣映画』だと言える。庵野秀明のシン・ゴジラは勿論、新世紀エヴァンゲリオンにもかなりの影響を与えたと思われる。特に作戦準備〜実戦に至る画の作り方、音楽の使い方などはヤシマ作戦を彷彿とさせる。この演出はオタクにとってもはや麻薬である。科学に金や権力の臭いがついて政治や経済の道具にされる中、人智を超えた超能力者に運命を託すところも面白い。こういうものを見せられると、やはり人間は人間に一番興味があるんだなと思う。極端な話、ゴジラとビオランテがただ戦ってる映画なんて誰が見る?ちっぽけで何もできなくても人間が出てなくちゃ見ないだろう。本当に何もできなくてゴジラの恐怖に右往左往しているだけでもいい。この圧倒的な敗北感…それを味わう。でも何故だろう。この無力感が心地好いのは。
そう

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