abさん

エレファント・マンのabさんのレビュー・感想・評価

エレファント・マン(1980年製作の映画)
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1980年の作品なんですね。白黒だからもっと前の映画なのかと思ってた。

そして主演のジョゼフ・メリックを演じたの、オリバンダーのおじさんだったんすね。


ここから先のレビューは「映画」と「舞台」の感想が混ざっています。

映画は映画でレビューしろやという気持ちも抱きつつ、作品が伝えたい根底のものは同じなのではと思い、舞台の感想も混じえながらレビューします。

ずっとエレファント・マンは気にはなっていたのですが、ちょっとしたホラーなのかなって思ってて、まぁ機会があったら観てみようって思っていたら、ジャニーズWESTの小瀧望さんが10/27〜舞台をやると言うことで、これは観ないと!と映画館でも上映していたので鑑賞。

実は映画を観たのは先月か先々月だったんですが、内容が内容だったので、なかなか感想をまとめる事ができず、舞台を観てから頭を整理させようと、一旦置いておきました。

で、10/29、30と2回観劇してきました。

現在観劇してから2日ほど経ちましたが、正直未だに色んな感情や気持ちが頭の中でグルグルしてるし、まだ引きずっています。

余りにもジョゼフ・メリックと自分を重ね過ぎてしまって、彼から出る一言一言や感情が苦しくて仕方ない。多分それは明日も明後日も同じだと思います。
彼が純粋だからこそ、悲しさ辛さをどれだけ抱えても優しくいるその時間が辛かったです。

映画では、特殊メイクをする事によってよりメリック本人に寄せていましたが、それと同時に映画を観た後「じゃあそのジョゼフ・メリックを小瀧さんが演じるとどうなるんだろう…舞台経験もそう豊富ではない、24歳のグループ内でイケメン枠として活動している人が"特殊メイク無し"で伝えるってものすごいチャレンジなのでは…?
彼の技量がめちゃくちゃ問われるのでは……」

と勝手に期待と不安が入り混じっていました…

が、実際に小瀧さん演じるジョゼフ・メリックを目の前にした時、その不安はすぐになくなり寧ろ想像以上の、今の小瀧さんにしか表せないジョゼフ・メリックに出逢えました。
小瀧さん自身身体を出来る限り曲げ傾け、歪めたり、呼吸の仕方も映画で見たジョゼフ・メリックに寄せており、ただマネするというよりかは特殊メイクがない分、小瀧さんだからこそ伝えられる小瀧さんが感じ取ってるジョゼフ・メリックがいました。
そして何よりその声を聴いた瞬間、小瀧さんの通った声を活かしながらも(声が本当に舞台に向いてるんだなと思った)その声色は小瀧望ではなかったんですね。

"小瀧望"が"ジョゼフ・メリック"になっていく様子を観ている間、呼吸するのを忘れそうになっている自分がいました。

そして舞台の内容は映画からアレンジされている部分もあり、映画とはまたひと味違って素晴らしい内容でした。
といっても作品の内容が実話を元にしたとても複雑なお話なので「素晴らしい」の一言で終わらせてはいけない、私にとってこの先ずっと心に残る大切な作品になったのは確かです。

舞台での話なんですが、
それが良いか悪いかは別として、映画ではあまりにも辛過ぎてこのシーンを舞台でやったらエグすぎるなぁと思っていた部分は、カットというかアレンジされていてちょっと安心しました。

でもその辛すぎるシーンも映画だからこそ目を逸らさずに見れたのかなとも思ったり。

人の見た目の差別から始まり、そこから"人間という生き物がどういうものか"、"何が正しくて何が間違いで"、"何が普通で何が異常で"、"そもそも普通とは何か"など…一人一人立場が違うからこそ、どうしても交わることの出来ない価値観や考え方が残酷なまでに描かれており、映画でも舞台でも観劇中ずっともどかしくて辛く苦しかったです。
「救いがない…無さすぎる…」と何度も思いました。

ですが、"正解も見えず、救いもない"んだけれど、実話を元にしているからそもそも救いもなにもなくて、それ以上でもそれ以下でもないんだな、とも思いました。(舞台観劇後パンフレットを読んでいたら演出の森さんが同じ様なお話をされていたので、なんだか腑に落ちた気がします)

1800年代(違っていたらごめんなさい)の世の中の価値観も、今この時代もちょっとずつ意識は変わってきていっているのかも知れないけど、結局人間の行動と認識って変わってないんだなと虚しい気持ちにもなってます。

でも、その"救いがない中"でも、メリックとケンダル婦人の間に芽生えた言葉では言い表せない"なにか"は幻ではなかったと私は信じたいです。

正直未だに綺麗な文にして感想を綴ることはできませんが、映画も舞台も、1、2回観ただけで無理に答えを得ようとしなくても良いし、どの作品にでも共通して言えますが、同じ作品でもその時々で感じる事は変わったりするので今感想が見つからず気持ちの落とし所が見つからなくても何年か後にふと飲み込めれる時が来るのかも知れないと思っています。


最後に、今回劇場に入って思ったのは、客層が本当に幅広くて女性は勿論、男性も青年〜お年を召した方まで色々な方が来ており、劇場会員の方や映画ファンの方も来られたりしていたのかなぁと、色んな層の方に小瀧さんとジャニーズWESTを知って頂ける良い機会になったのではないかと嬉しく思っています。


パンフレットに書いてあった作者バーナード・ポメランスからの

「メリックの役を演じるものは〜……医者の意見を聞いて欲しい」

と。

ここまでのリスクを背負ってでもジョゼフ・メリックを伝えてくれた方々に感謝します。
abさん

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