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カフカ 田舎医者のmitakosamaのレビュー・感想・評価

カフカ 田舎医者(2007年製作の映画)
3.6
山村浩二による、カフカの「田舎医者」のアニメ化。
ロシアやチェコなどの旧共産圏のアニメーションの雰囲気を醸し出しながら、現代的な山村アニメの真骨頂やね。

鉛筆タッチで描かれたビジュアルだが、先ずキャラクターの動きが面白い。モーフィングで絵柄をギュンギュン振り回す。キャラクターが普通ではありえない動きを繰り返す。エキセントリックで気を狙った演出ではあるが、動画を何百枚と描かずに済む、謂わば上手い手抜きの手法なんだよね。
でも作品全体を俯瞰すると一向に違和感がない。

雪深い村で農村医が子供の治療に馬を探す。馬子が手配したが、医者宅の女中を狙う。
結局、女中を危険にさらし急患の家に。
病気の少年を診察するが、よく見たらお腹に穴が。

とにかく全編を通し陰鬱さが漂うが、それでいて何処かコミカル。
医者には常に、別の人格が二人付きまとい、心の声で不満を漏らす。
本音が言えない哀れさがペーソス溢れ表現される。

しかし山村浩二って不思議な人だよなぁ。アートスタイルとしては、凄い枯れた表現なのに、まだ55歳だぜ。庵野秀明や片渕須直らとほぼ同世代。
そうは見えん。スイも甘いも噛み分けた大御所の作るアニメみたいだよ。
カフカというモチーフ選びも相当渋い。

そういう作作風という自己演出も含めて、相当テクニカルな人だと思うんだよな。
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