Tanuki

サイコのTanukiのレビュー・感想・評価

サイコ(1960年製作の映画)
4.5
驚くほど面白かった。顧客のお金を持ち逃げする女性の物語が、シャワーシーンの闖入者によって突然の終わりを迎え、不気味な屋敷と探偵の物語に姿を変えるのが見事すぎる。主人公のバトンを姉妹間で受け渡すのも巧い。今見ても新しい鮮烈なカットが盛りだくさん。贅沢な映画だ…

特に、何の変哲もない冴えない男として登場したベイツが、だんだん不穏な雰囲気を纏い出して、「異様」な存在として決定づけられるのが、不自然なほどベイツが首を曲げカメラに顎先を向けるカット。痺れた。めっちゃカッコいい。シャワールームの死体の愕然とした表情も良い。

サイコな殺人鬼と異性装を結びつける描写は、『Disclosure』で指摘されてる通り、トランスジェンダーにとって直接的に悪影響を及ぼすもので、問題があるのは忘れちゃいけない。『羊たちの沈黙』バッファロービルの描写は、『サイコ』の影響も受けてるんだろうか。

「トランスヴェスタイトか?」「いや違う、彼は母親になりきっているんだ」ってセリフがあるものの、やはり男性が女性装をすることで、視覚的にインパクトを与えようとする意図があるのは間違いなくて。それが成り立つのは、「男性が女性の格好をするのは異常」という規範があるからだ。

という前提はあるものの、ラストシーンの演出はやはり素晴らしかった。手にとまるハエと被さるセリフ、彼がもはや正常さを失っていることを如実に表す表情の演技。「毛布を渡す」アクションで映像を繋ぐのもうまい。ドラマ『ベイツ・モーテル』気になるなあ〜また配信してくれないかな
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