Emiru

トゥームストーンのEmiruのネタバレレビュー・内容・結末

トゥームストーン(1993年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

アメリカ史に残る決闘の1つ、OK牧場の決闘とそれに関わった人々の物語。言うてOK牧場の決闘は一瞬しか出てこない(史実に基づいた細かい描写としっかり30秒なのがポイント)それより、法に生きる男ワイアット・アープと無法者の死にゆくガンマン、ドク・ホリデイとの立場を超えた友情が見どころ。
この作品、ワイアット・アープが主役なのだが完全にヴァル・キルマーのドク・ホリデイが主役を食ってしまっている。結核患者であったドクを再現するため、キルマーは常に顔面蒼白で目元が赤く、いつも汗を額に滲ませているが、だからこそうちに秘める強さと儚さが輝いている。元歯科医で学があるにも関わらず、結核だと知り生きることに自暴自棄になってしまい、無法者のギャンブラーに堕ちたドク・ホリデイのめちゃくちゃな人生の中で唯一の正義と希望を背負ったたった1人の友人ワイアット・アープ。彼のためにドクは残り少ない命を差し出して悪人の制裁に手を貸す。普通に生きることを諦めてしまったドクが最後に正義の人として自分の人生にケリをつけるのが良い。人を殺すのは生まれてきたことへの復讐。それはきっとドクの自分自身への言葉なんだろうな。
ラストで「普通の人生を歩みたいのなら俺に別れを言え」と泣きながら言うドク。失恋の思い出も彼が母親から結核を移されてしまったという悲惨な経緯を知ると、彼の人生が上手くいかないことの連続だったことを物語っている。普通に生きられなかったことを後悔しつつも、友人の背中を押し、彼から自分を記した手記をプレゼントされて息を引き取る。ブーツを脱いで死ぬことが悔やまれる、最後まで無法者として生きたドクの姿がひたすらに美しい映画だった。
Emiru

Emiru