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誘拐報道のpasatiempoのレビュー・感想・評価

誘拐報道(1982年製作の映画)
3.4
初見。
 実際に起こった兵庫県での男児誘拐事件を基に読売新聞社や日本テレビが協力し製作された作品。
 誘拐事件を主眼に置きつつ警察および報道の在り方や対応を描き、一般人があまり知ることが無い範囲まで描いています。

 犯人役にショーケンこと萩原健一、その妻に小柳ルミ子、その他丹波哲郎や三波伸介など有名俳優陣が名を連ねています。

 実際に起きたのが1980年、昭和の成長を駆け上がってる時代で、たばこの煙が充満した警察署内や犯人とのやり取りで使われる黒電話など、映像からはその当時の雰囲気が良く伝わってきます。

 古屋数男(萩原健一)は、早々に男児を誘拐し被害者宅に身代金3000万円を要求します。「警察に言うと殺す」と脅されますが、すぐに通報。
 手元に現金がある訳で無いですが、子供の命を考えると実際、その立場になったら通報するか、ふと考えてしまいます。

 警察は報道機関に犯人を刺激しないようと正式に報道協定を結び、事件が解決するまで報道を自粛することを約束する。
 この頃は、スマホなど無い時代で情報を得るには足を運ぶしかなく、報道をしないまでも情報集めに翻弄する社員の大変さも観ることが出来ます。

 一度目の接触で警察が動いていることが分かり、子供を殺そうとするシークエンスがありますが、お金が欲しいのに殺しては手に入らないのに何でやろうとしたのか、犯人の考えがイマイチ分かりません。
 また、誘拐された男の子、一度逃げ出しますが、声を上げれば助かったのに何で声を出さなかったのか?ここもどのような心情だったのでしょうか。

 なぜ、誘拐を行ったのか、序盤では分かりませんが中盤で背景が描かれます。
 喫茶店経営に失敗し喫茶店をとられ200万の手形があるうえ、子供には私立の小学校に通わす、という無計画ぶり。
 妻はそれでも夫を信じ造花工場で働きながらやりくりしている状態。
 描かれる娘は良い子で確かに可哀想な家庭だが、両親がお金の管理ができなそうでダメですね。

 当時は個人情報なんていう概念が無いので、学校全員の電話番号や住所など名簿になって配られていたので、男の子が医者の子供ということも簡単に分かってしまうのですが、古谷は誘拐した男の子と娘が同じ学校の同級生と知りビックリします。
 この辺りは学校のこと娘についても何も知らない父親としての駄目さが出ています。

 古谷はとりあえずお金だけ手に入れて早く解放した上げたいと愛情も芽生えてきます。
 何度も接触を試みますが、警察がいて諦める展開になり被害者夫婦を脅迫します。
 ラストチャンスで場所を指定され、「警察は来るな」と懇願しても来てしまいます。

 結果論から言えば大丈夫だったのですが、警察として果たして命より逮捕優先で良いのか、個人的には大いに疑問が残りました。警察の強引な捜査が今も残っているか気になるところです。

 疲れ果てた古谷が偶然に職務質問から逮捕につながるわけですが、唐突な感じな展開で締まります。

 一方、恋愛パートを挿入して報道記者の大変さがそこまでは伝わって来なく、もう少し汚い手口を使った各社の情報戦もあっても良かったのかなと。
 警察が規制解除前に報道したと読みうろ新聞社が処分されますが、今はネット時代なのでこんな規制は無理ですね。
 
 この誘拐された子は今は60才くらいですかね。この作品をどう思うのでしょうか。


視聴環境:ノーカット
パンフ:未保有
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