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しとやかな獣のtakamaruのレビュー・感想・評価

しとやかな獣(1962年製作の映画)
4.7
せっせと部屋の模様替えをする老夫婦。家族が貧乏暮らしをしているという建前上、来客に対して豪勢な暮らしぶりを隠さないといけないのだとわかるオープニングから、芸能プロの金の使い込みを巡るドタバタと、女に翻弄される男たちの混乱劇が、最後の最後まで緊張感を途切らせることなく持続する、もう本当に何度見ても面白い痛快作! 閉鎖された空間で展開される演劇的なシナリオだけど、人物を切り取る映像のレイアウトがいちいち実験的で、意表をつく音楽の使い方にも啞然とさせられる。飄々としてのらりくらりと相手をかわす伊藤雄之助。息子をかばう嘘泣きを繰り返すシレっとした山岡久乃。画面に映っていなくても、常に映画の中心にいるナチュラルボーン悪女な若尾文子。「わたしという女の弱点を、逆に思いっきり効果的に使ってみたいと思ったのよ」と言って男たちを手玉にとるような女には、男が束になってもかないっこないって。とはいえ若尾文子を目の前にしてしまったら、それがとことん痛めつけられるマゾ的快楽であるとしても、溺れてみたくなるその気持ちはわかる。うん、わかるよ!
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