しとやかな獣の作品情報・感想・評価・動画配信

「しとやかな獣」に投稿された感想・評価

Ryoma

Ryomaの感想・評価

4.1
ラスト。振り向きざまの女の顔。その奥に潜む「何か」が奇妙な祭囃子の音にかき消されるとき、強烈な違和を孕んだ「不気味なもの」がやはり画面の奥の方から立ち上がってきて、それが観客の脳内に伝染しきったときに、映画は終わる。完璧。
Mariko

Marikoの感想・評価

4.5
『裏窓』(ヒッチコック)みたいだな〜というアングルで始まるブラック・シットコム。

いろんな方が密かに絶賛してるので観てみたけど、納得の凄さ。
カメラが団地内からほぼ出ず、しかも盗撮魔か?みたいな妙なアングルの固定ショットが続いたり、出てくる階段は「概念」としての階段?(これが怖い)、そこに劇伴は能囃子という物凄い個性の塊のような作品で、これが60年代初頭の日本で作られたことが驚き。

晴海団地に住む最低なクズ一家はじめ、出てくる人出てくる人真っ当な人間が一人としていない世界。『パラサイト』に先駆けること50余年、昭和30年代にこれ作ろうと思ったの頭おかしい(褒めてます)。

このドラマ全体を翻弄する一見上品な悪女を演じる若尾文子の美しさと存在感がそりゃあもう凄いのだけど、地味にそれを上回るのがダメ一家のクズ母山岡久乃。上品な物言いと言ってる内容の酷さと淡々とした佇まいのアンバランスっぷりが凄過ぎる。
冒頭からギスギスした登場人物ばかりで嫌になる。が後半、船越英二の役柄が一服の清涼剤のように心をスっとしてくれる。しかし根の優しい人間は、やっぱり弱かった。

画角や構図が決まり過ぎているのがまた、人間の醜い部分をより一層引き立てている。

団地の一室を舞台とした会話劇。
貧困生活に逆戻りしないように一家は協力し、人を騙して金を稼ぐ生活。非常にパラサイトに似ている。
家族同士の会話劇が結構明け透けで、途中まではもはやコメディ。
これは家族の会話ではないでしょうみたいなシュールな笑いを楽しむ感じ。
そして、今作の本ボス会計係の三谷幸枝に漂う無敵感には笑ってしまう。
結局は男って馬鹿的な作品かと思いきや、最後の最後ヒヤッとするようなサスペンス展開でひっくり返される感じが堪らない。

[2022年 111本目]
ジョウ

ジョウの感想・評価

3.8
フランス シネマテークトゥールーズにて鑑賞

脚本は新藤兼人監督。
さすが人間の裏表をユーモアを交えながらも直接的に、まさに獣に見えるように書いています。
そしてやはり斬新なカメラワークが凄いです。
序盤の長回しや頭上から人物を撮ったり、急なクローズアップで緊張を高めたり。
舞台が団地の一室という非常に狭い中でカメラがあらゆる角度から人物を映すことで大きな視覚効果を得られますし、結果登場人物ほぼ全員を悪者として捉えることで社会の縮図とも取れるかもしれません。
akrutm

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3.7
息子に勤務先の芸能プロダクションの金を横領させ、娘に売れっ子小説家の愛人をさせて金を巻き上げようとする悪党一家の2日間を、一家が暮らす団地の一室を能狂言の舞台に見立てて描いた、新藤兼人脚本、川島雄三監督によるブラック・コメディ映画。ほぼ団地の一室のみで撮影されているが、その縦横無尽なカメラアングルが素晴らしく、川島雄三監督の最高傑作のひとつとも言われている。

確かにこの映像は素晴らしい。あらゆる方向から複数の部屋を俯瞰できるように撮影された様々なショットのおかげで、2DKという狭い空間であることを利用しながらも、広々とした舞台作品のような趣がある。個人的には能狂言に見立てるための太鼓囃子は耳障りだったが、心霊写真のように天井の角から隣部屋を観察するショットや、壁を隔てて隣どうしの部屋の様子を同時に映すなど、魅力が尽きない映像だけでも一見の価値がある。

また、当時の複雑な世相を反映している団地という設定そのものも、興味深い。戦前の家長をトップとする大家族から戦後の核家族へという、「家」制度の(ある意味で外部圧力による)強制的な移行を象徴するのが団地である。当時は団地での生活が中流家庭への入り口であるかのごとくもてはやされていた一方で、高層化によって同じ団地であっても格差が生じ始めたというのがこの頃であろう。本作は晴海団地という実在した団地を舞台にしているが、映画の冒頭でも語られるように、前田一家が住んでいるのはエレベーターのない初期に建てられた棟である。一方で、日本住宅公団による初めての高層住宅として10階建ての晴海高層アパートが建てられていて、そこに入居する家族との間に経済的な格差が生じることになる。よって、前田一家は雨漏りのするバラックから団地に移り住む(そもそも団地自体も彼らが自らの力で手に入れたものではないのだが)ことでステップアップしたわけだが、それはあくまでも一時的な仮の住まいなのである。言い方を変えれば、住居ではなく悪だくみのためのアジトであり、アジトを感じさせる高揚感や不安定感が縦横無尽なカメラアングルやショット、姉弟が見せるダンスなどで表現されている。そう考えていくと、経済的な上流階級を目指す彼らは、戦後の規範への強烈なアンチテーゼを表象しているとも言えるだろう。

このような優れた映画である一方で、あややを十分に堪能したいという動機で選んでしまったのが本作ということで、個人的には満足し切れなかったのは悔いが残る。確かにある意味では若尾文子が主役なのである(本映画のクレジットも彼女が主役としている)が、でもやはり前田一家が主役である。夫婦を演じた伊藤雄之助と山岡久乃の演技はさすがと言ったところで、特に、一家を裏で操っているような山岡久乃がイイ。(ただし、息子役の川畑愛光の演技がイマイチなのが残念。)なので、芸術性に優れた映画であることを知った上で観ていたら、もっともっと高評価を付けれただろう。
ぬっこ

ぬっこの感想・評価

5.0
日本版パラサイト。
棚や柱を使い境界線を巧みに描く。
画面に画面をつくる川島雄三監督の巧みの演出。
家だけで展開する一つの家族の物語。
体感2時間ぐらいに感じた
最初の外人かぶれの男が面白かったんだが
最初だけしか出てこないのね
話の途中で終わった感があったかな
最後の俯瞰で1台車が来てると思うのですが逃げてきたのかな?
いやめちゃくちゃ面白い何これ。

『パラサイト 半地下の家族』っぽいって聞いてたけど予想以上に元ネタ感あった。
犯罪によって成り立っている家族、という意味では『万引き家族』でもあり。

漫画のコマ割りみたいに窓枠やなんかを使って画面を区切ってるのや、構図やカメラワークがハイセンス。
冒頭のタイトルバックからして「あ絶対面白いやつだ」ってなる。

夕焼けをバックに踊り狂う姉弟のシーンや階段のシーンなんかは絵的に特に印象的。

ほぼ会話劇で1シチュエーションなので演劇の様だが、上記の様なカメラワークの力で様々な角度からこの1部屋を写しており、これはやっぱり映画ならではの魅力だと思うわけですよ。
cov

covの感想・評価

4.4
なんじゃこりゃ、オモロッ!
能囃子からはじまり能囃子で完。
しびれるー。

覗き見、盗み聞き仕立て。物語は団地の一室だけで展開し、階段がアクセントに。団地暮らしのしたたかな一家に次々と曲者が訪ねてくるテンポよい会話劇。モラルって何?しれっと騙して騙されて、カラッと開き直る潔さ。新藤兼人の脚本がお見事なブラックコメディです。
『おとなのけんか』『裏窓』『パラサイト』『家族ゲーム』のような空気感もたっぷり。

[Kadokawa cinema collection]
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