かにみそ

アレキサンダーのかにみそのレビュー・感想・評価

アレキサンダー(2004年製作の映画)
3.5
想像していた勇敢なアレキサンダー王ではなかった。イメージとしては、何者にも負けない強い男アレキサンダーが仲間を率いて戦いつつ、やがて病魔に襲われて亡くなってしまうというものだったが、この映画のアレキサンダーはマザコンのもやしっ子。
期待は裏切られたが、これはこれで良かったと思う。アレキサンダーは皆を引っ張るのではなく、母親に引っ張られ父親に追いやられ、親友のヘファイスティオンに導かれ次第に強くなっていく。か弱い少年が逞しく成長していくその姿はとても人間味を帯びていて感情移入しやすい。彼も人の子だったのだなあと思わせる。そんなアレキサンダーがやがて周囲の反感をかって没落していく姿は観ていて胸がとても痛くなった。
それと、アレキサンダーとヘファイスティオンの関係にとても心惹かれた。友愛とも恋愛ともまた違うような気がする。もっと深い、精神的な部分で繋がり合っている二人。ヘファイスティオンはアレキサンダーを心から愛しているし互いは信頼し合っているけれど、だからこそ深く干渉し合わない。無言の信頼関係に心を打たれた。とはいえ、アレキサンダーが妻を娶った初夜に二人の寝室に忍び込んで、もはや他人の夫であるアレキサンダーに指輪を渡してしまう辺り、彼もなかなかやるなあと。私が奥さんでもぶち切れますわ。

アレキサンダーの壮大な一生を描くということで、迫力は十二分に感じられた。撮影に実際のゾウを使ったというから驚きだ。それにしてはゾウがあまりにも自然に動いていたので、ゾウの演技力に驚かされる。
映画全体の雰囲気として、男性だらけの荒々しさも感じられたが、それ以上に官能的な雰囲気が漂っていた。へファイスティオンのエキゾチックな目元はセクシーだし、アレキサンダーの子犬のような瞳を母性本能を擽られる。
ただ美しい男目当てで見ると戦闘シーンが長すぎて死ぬので、覚悟はしておいた方がいい。
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