軟骨肉腫を患う道子。
京都御所や同志社が映し出され、自身の学生時代に重ねた。
まさに京の花咲く道で人生を謳歌している途中だった。
この病気さえなければ誠と幸せに生きたかもしれない。
誰彼構わず突然襲い掛かる病気。
今この瞬間痛いところもなく平凡に暮らせていることこそ幸せなのだと思った。
20代。
人生が果てしなく長く感じて
一生このまま働き続けなければいけないのだろうかと誰もが悩む時期。
病気でなくても死にたいとふと思うことがあるのではないだろうか。
つまらない日々のなかで、父親に見せるファッションショーや大阪ドライブは道子にとって豊かな時間だったことだろう。
道子だけでなく、
私自身も、たとえ病気がなくとも、
旅で非日常を彩ることがある。
これがあるから、楽しい、行きたい(生きたい)と思える。
道子と違うのは、私にはまだ人生が残されているというところ。
道子がふと思う「死にたい」を胸に熱く秘めながら、残された道をとぼとぼ独り歩きして生きてゆきたい。