最初はまぁ、なかなか斬新でいい映画だと思った…が、物語が進むにつれ、激しく嫌悪を感じてしまった…
裕福な家庭に生まれ育つも、両親に問題があり、大学を出たら、ひとりで旅をしたいと願う青年。
ここまでは、普通。
それを実行に移す勇気と決断力には並々ならぬ強さを感じた。
家族を捨て、ひとり、究極に自分らしく、やりたいことを全部やって生きる。
俗社会から離れ、荒野でひとり生きていく。
共感はできないけど、なんとなく気持ちは分かるし、まぁたしかに少し憧れもある。
子供のように可愛がってくれるヒッピーの夫婦。
青年を慕う、キャンプの16歳の少女。
農作業を手伝わせてくれた男性。
養子にしたいとまで願う老人。
旅を進めるにつれ、多くの話を聞き、様々な出逢いを経験していく。
「孤独だ」と日記に綴りつつ、本当の「孤独」に気づいていない。
彼に見えているのは、"アラスカ"だけ。
自分の幸せだけを求め、たくさんの人を悲しませていることに気づけない。
しかも、その自分の幸せさえも、虚構であることに気づかない。
親、妹、ヒッピー夫婦、老人、少女…。
そして、やっと物語終盤で気づいた、
"Happiness is only real when shared"
という事実。
今まで幾度となく、映画で議題にのぼってきたことだが、こんなにも響かなかったのは初めて。
口には出さずとも、生きていれば、それに気づかされる機会は多々あって、あれだけ、人に迷惑をかけて行き着いた先が、そんなことか。
そう思って、非常に陳腐に感じた。
愛に飢えた青年が、きちんとした信念と知識なく本を啓蒙的に読んだが故に、人との関わりの大切さと自然の脅威を軽んじ、ただただ、命を無駄にし、人を悲しませ、動物を殺した。
人間というちっぽけな存在がただ、いきがって、自然に挑んで、例のごとく完敗しただけの映画。
キャストの演技が皆素晴らしかっただけに、非常に残念です。