さとう

リリイ・シュシュのすべてのさとうのレビュー・感想・評価

リリイ・シュシュのすべて(2001年製作の映画)
4.0
とにかく見ててつらい。閉塞感で押しつぶされそうになる鬱映画。カメラワークも結構長時間ブレてて(そういう演出ではあるんだけど)めっちゃ酔った。だけど完全に良作としかいえないから困る。

「若いからなんでもできる」なんて大人が高みから言えることで、実際子どもの社会を自力では抜け出せないし変われない。
不満な現状を変える転機が訪れて、努力の甲斐あってハッピーエンドなんて、実際現実にそんなにはっきりとした起承転結なんてない。痛みを封印して、5年くらいしてやっと「あのときこんなだったかな」ってざっとパッケージとして俯瞰できる。

そうやってパッケージ化されるなかで、どんどん美化され洗われ固められていく痛みを、この映画はそのときのそのままを柔らかくみずみずしく泥臭く描いていた。
その潔癖さゆえの鮮やかな痛みが、田舎の閉塞感と対比されてダイレクトに伝わって、観賞中ずっとひりひりさせられていた。
さとう

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