タミキーリ

ダンケルクのタミキーリのレビュー・感想・評価

ダンケルク(1964年製作の映画)
4.0
アンリ・ヴェルヌイユ「ダンケルク」(1964)を観た。交わされる会話は非日常の中の日常で、どちらかというと緩めな印象で他人事っぽさもあるんだけど、なんの前触れもなく襲ってくるBf109によっていとも簡単に失われる人の命。ジュリアンを演じるベルモンドの言動は、かなり真面目なものだと思う。
財産である家を守りたいがために一人残る女性との絡みなど、随所にフランスっぽさがある。ノーランの「ダンケルク」で歴史考証を担当したジョシュア・レヴィーンの著書にもあった、フランス人が砂浜に住まって料理したりしている描写もあったし、ビーチで整列してもいた。
主人公が拠点としている場所は、ダンケルクではなく、原題にもあるズィトコート。そこからダンケルクへ向かう道中での出来事で、日程的には、6月1日から2日。つまり、ダイナモ作戦の本当に後半であり、かなり空からの攻撃が厳しくなってきた頃。にも関わらず主人公は歩く。
主人公のその歩きは、側から見るとのんびりにも思えるし、証明書が必要と言われて、行った先で「会議中」と断られて出直すなど、悲壮感は一見なさそうに思える。でも爆撃を受けた「結果」の描写は、しっかりと悲惨なものなので、そのギャップに少したじろぐ。
ベルモンドのくわえタバコがひたすらカッコいいです。まだ31歳と若い。ダラダラしてそうで、理屈っぽいけど、行動は正義感からくるヒーロー的なものだった。ラストの描かれ方がもうほんと、フランス映画です。