Emiru

真夜中のカーボーイのEmiruのレビュー・感想・評価

真夜中のカーボーイ(1969年製作の映画)
3.5
壮絶な過去と秘密を持ちながらも、どこか明るくちょっと抜けてるテキサス出身の夢見るジョーと、ネズミみたいに都会の片隅でゴミと埃の影で生きるリコ。誰にも言えない苦しみを抱えるジョーだが、死にかけの詐欺師リコのために自らの過去とケリをつける。夢見たニューヨークでのアメリカンドリームも、カウボーイへの逃避も捨て去り太陽輝くフロリダのマイアミへ。リコのフロリダへの夢の中にはいつもジョーが居たし、ジョーはリコの夢のために成功への道を捨てる。同性愛者という世間から拒絶される立場の主人公と、世間に見放された愛しき浮浪者。壮大な愛と友情、例え夢が叶わなくてもフロリダの夢だけはずっと輝いている。その夢が終わって、今は胸の中に何とも言えない切なさと、劇中歌の「うわさの男」の優しいメロディだけが残る。そんな映画。

世間的には汚らしくてもそこには確かな友情があった。きっと私達も彼らを見たって無視して眉を顰める立場だから、でも彼らの間にある愛情はそんな私達のことだって遠くへと退けてしまう

ダスティン・ホフマンの演技が素晴らしく、可愛らしくて汚らしくてとにかく凄いのに主役のジョン・ヴォイトが喰われてないのが凄い。アメリカン・ニューシネマは大抵起承転結がハッキリしない平坦なストーリーが多くて苦手なんだけど、この映画はそういう平々凡々とした人々が現実に呑み込まれる、世の中で当たり前に起きていることが繰り広げられるから良いんだと思う。リアルだからこそ刺さると思うから。
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