傑作、めちゃくちゃ面白い。
けど『残菊物語』には遠く及ばない。
劇中劇をしようとしてないのはわかるけど、芸能をモチーフとして扱う映画で劇から2人の葛藤や思いを浮かび上がらせられないのは成瀬のショットへの執着の無さが良くない方向に、顕著に表れてしまったとしか言えない。
舞台に立つことに意味を持たせる映画であって、舞台で何をするかに意味を持たせる映画ではないよなぁと。
ラストの鶴八への思いを全部口にするあたりは演出が下手。『残菊物語』のラストを思い返してみれば一目瞭然じゃないだろうか。映画なのだから、全てを口にさせるのではなく、ショットで語ってください。
とは言っても星5をつける理由は、温泉の後の2人の散歩が本当に美しかったからで、あのショットの連鎖は映画の限界に立ち会ったような感覚に陥りました。
あれは溝口には撮れない。