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ニュー・シネマ・パラダイスのたのレビュー・感想・評価

4.5
中年の映画監督サルバトーレが30年間会っていない母の「アルフレードの葬儀が明日ある」という一報を聞いて、シチリアの映画館で過ごした幼少期・青年期の出来事や恋愛の記憶を回想する物語。
第2次世界大戦後間もないイタリア・シチリアの田舎を舞台とし、映画好きの少年サルバトーレ通称トトは牧師の手伝いをした後、教会兼映画館で映画を見たかったが牧師に止められる。そこで映写室に潜り込んで村唯一の映画技師アルフレードと出会う。潜り込むたびに叱られるトト。好奇心旺盛なトトはたくさんの切られたフィルムがゴミ箱に入っているのに気づき、アルフレードに「欲しい」というも断られてしまう。何度も潜り込むトトに少しずつ親近感を覚えたアルフレードはトトに映写機の操作の仕方を教えるなどして年の差を超えた友情を築いていく。
ある日の上映でフィルムが燃え、その火災でアルフレードは視力を失うことに。新しく建て直した映画館「ニューシネマパラダイス」でアルフレードの代わりに映画を回すことになったのはトト。アルフレードの教えを引き継いで映画館の仕事をこなしていくことになる。
トトは青年期を迎え、駅で見かけた美少女のエレンとの初恋も経験するも、徴兵され除隊後に帰ってくると、映画技師が別の人になり、エレナも消息不明となる。落ち込むトトにアルフレードは「若いから外に出て村には帰ってくるな」「人生は映画と違ってもっと困難なものだ」と伝える。トトはその言葉を受け止め、村を出てローマへと向かう。
30年後、アルフレードの葬儀のために村に帰ってきたサルバトーレは葬儀の後にアルフレードの妻から形見を受け取る。それはフィルムであった。ローマに戻り、そのフィルムを映写すると、そこには幼少期に欲しがっていた切られたフィルムのシーンの詰め合わせであった。トトのためだけに編集されたフィルムの映像を見ながら当時の記憶にふけるところで物語は幕を閉じる。
まずは何といってもあまりにも見事で綺麗なラストシーン。ここまで美しい伏線回収はあるのだろうか。映画愛、そして友への愛にあふれる締め方であった。 
次に幼少期のトト少年がとにかく可愛い。アルフレードにかまってほしくてわざと足を怪我して自転車に乗せてもらう子どもっぽさもより愛らしく映る。アルフレードが野外の家の壁に映し出した映画を見てうっとりした表情の笑顔は忘れられない。
そしてアルフレードがトトに語りかけるセリフの数々。映画の台詞を引用することも多かったが、旅立ちのきっかけになったアルフレード自身の言葉はまさに「可愛い子には旅をさせよ」を彷彿とさせられる。愛する人のために一番大事なことは何か。改めて再認識できた。
他にもシチリアの美しい街並みの風景、ちょっとしたコメディギャグ、印象深い音楽の数々。何度も見たくなる要素がいっぱい詰まっている、傑作であった。この映画をもう間もなく閉館する映画館で見られたことは本当に感慨深かった。映画体験の良さを周りに伝えて、映画館に足を運ぶ人が増えるようにしていきたい。
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