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海底軍艦のジミーTのレビュー・感想・評価

海底軍艦(1963年製作の映画)
5.0
この映画は、プロデューサー田中友幸がいかにして特撮SF映画を売るかと果敢にチャレンジしていた時期の成果のひとつといえます。ゴジラだけが特撮SF映画じゃない!
とは言え、1900年(明治33年)に書かれた「海島冒険奇譚 海底軍艦」(押川春浪・著)を原作として引っ張りだしてくるとはチャレンジ精神ありすぎですね。

しかも題名だけ借りて勝手に話を作った。のではない。押さえるところはしっかり押さえて、熱血冒険少年SF小説を現代風冒険SF映画にしており、そのアダプテーションはお見事ですよ。さすが名脚本家関沢新一!
極端に言うと、原作で海底軍艦に撃破される「インド洋の大海賊」を「ムウ帝国」に、桜木大佐を神宮寺大佐に置き換えれば、この映画になる。
絶海の孤島の「秘密造船所」(原作より)で、敵船撃破のために秘密兵器を開発するという設定も同じなら、海底軍艦のデザインもほぼ原作通りと言ってよいでしょう。さすがに原作では空を飛んだりはしませんが、これが超カッコいいんですよ。

映画での海底軍艦「轟天号」は、原作では海底戦闘艇。その名も「電光艇」。全長百三十呎6吋、幅員二十二呎七吋。艇の形は南印度で一撃の下に巨象を斃し、猛虎を屠るという投槍の形に髣髴として、その両端は奇妙な鋭角をなす。と、かなり細かく海底戦闘艇のスペックが続きます。
新式魚型水雷を備え、最大の特徴は艦首の「敵艦衝破器」。一名「三尖衝角」は艇内発動機により一秒間に三百廻轉し、鉄艦を粉砕する!いやもうこれで充分でしょう。
ちなみに「電光艇」の名前は禅語「電光影裏に春風を斬る」からとったもの。う〜シビレる!

これを明治33年(1900年)に考案した押川春浪のイマジネーションも凄いけれど、63年後にストーリーも含めてリニューアルして映像化したのも素晴らしい。
アナクロ元帝国軍人がヒーローだったり、勇ましい音楽が流れたりで右翼と誤解されそうだけれど、それでもムウ帝国とその女帝の最後にはものの哀れも漂い、やはりこれもこの時期の東宝特撮SF路線の傑作と言ってよいですよね。

だからこそですよ。今度はぜひ原作通りの「海島冒険奇譚 海底軍艦」を映画化してほしい。1900年・明治33年を舞台にして、わざとレトロなイメージで。そう、あの「フラッシュ・ゴードン」(80年)みたいに。

追伸1
原作「海島冒険奇譚 海底軍艦」はシリーズ化して、「英雄小説 武俠の日本」「海国冒険奇譚 新造軍艦」「戦時英雄小説 武俠艦隊」「英雄小説 新日本島」「英雄小説 東洋武俠団」と続きますが、当初の熱血冒険少年SF小説が、次第に富国強兵SFになってゆき、つまらなくなっていってしまいました。
(私は右翼ではありません。)

追伸2
まさか押川春浪も、この映画のさらに14年後に海底軍艦が宇宙まで行って惑星大戦争に参戦するとは思ってなかったでしょうね。

参考資料

「海底軍艦」
押川春浪・著
1972年
桃源社

「海島冒険奇譚 海底軍艦」
押川春浪・著
2009年
青空文庫

「海島冒険奇譚 海底軍艦01序」
「海島冒険奇譚 海底軍艦02序」
「海島冒険奇譚 海底軍艦03序」
「海島冒険奇譚 海底軍艦04序」
「海島冒険奇譚 海底軍艦05序」
2009年
青空文庫

「序」は序文のみ。本編発刊に際しての、当時の軍人たちによるモノモノしい序文。
4件
  • 今年の1月にTOHOシネマズで見ました‼️👍❤️今、劇場で本作が見れる喜びよ!👍👍🎬

  • ジミーT

    ストローカーエースさん あ、劇場でやったんですか!素晴らしい映画体験しましたね。見逃してしまいました・・・。

  • ゴン吉

    この海底軍艦はめちゃくちゃカッコよかったですね✨ 原作も読まれたんですね😲 原作は読んだことが無かったので、情報ありがとうございます👍

  • ジミーT

    ゴン吉さん 原作「海島冒険奇譚 海底軍艦」は、現在青空文庫で読めますので、ご興味おありでしたら是非。

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