ゴシックロマンスの完成形
先日鑑賞したギレルモデルトロの「クリムゾン・ピーク」が出色の出来だったので、同じくゴシックロマンス映画の傑作と名高い「レベッカ」を続けて鑑賞。
監督はサスペンスの神様ことアルフレッドヒッチコック。
ちなみにわたしは「ダイヤルM〜」と「北北西に進路をとれ」が特にお気に入りです。
早速感想、めちゃくちゃ面白かった。
まずは冒頭、『現在』の『わたし』によるナレーションから回想形式で語られる今作。
倒叙式サスペンス映画でモノクロとくれば、「深夜の告白」が関連作品として挙げられる。
物語の全体像としては、マンダレーと呼ばれる屋敷に暮らす富豪の妻として嫁いだ『わたし』が、屋敷に仕える人々との関係や不在の元妻の幻影に苛まれるという、屋敷へ嫁いではみたものの系の典型的ゴシックロマンス。
タイトルにもなっている「レベッカ」とは、亡くなった前妻であり、登場シーンは1カットたりとも無いがとてつもない存在感を放つ。
「桐島、部活やめるってよ」を観たことがある人はそれを連想すると分かりやすいかな。
物語自体は繰り返すが典型的なジャンル映画のプロットに沿うので、特筆すべきものは無いがやはり演出の数々が面白い。
序盤、尋常ならざる様子で海を眺める男性とヒロインの邂逅から、テンポ良く入籍まで。
この時、婚姻届を上階から落としてもらうという落下運動が、後に帽子の落下という印象的なカットとも呼応する。
さて、中盤までは彼女がドウィンター婦人となるべく健気に奮闘する様が描かれていく。
夫婦がホームビデオを照射する美しいシーンと、それが中断されたのちの『わたし』がスクリーンに影を差す姿なんかも印象深い。
物語がやや推進力を持ち始める中間。
ついにダンヴァース夫人によるレベッカの部屋紹介。
このマンダレー自体が、実は意図的に屋敷の全体像を排除した撮り方がなされているが、一層不気味な映し方だ。
開かれたカーテンや忙しなく回転するカメラにより『わたし』が置かれた逼迫した現状を否応なくわれわれに共有させる。
そこからはさらに展開が加速。
レベッカの死の真相とドウィンター氏の秘密、『わたし』の変化と劇的なオチまでが一気に描かれる。
そしてついに最後まで全体像を見せなかった屋敷からの退出をもって物語が完結する。
特に終盤の怒涛の展開に入ってからはさすがの面白さだった。
ところで、倒叙式を採用しながら、結末においてまで現在の描写がないという奇妙な点も、このゴシックロマンス譚に妙な説得力というか幻想性を与えているな。
ヒッチコックのハリウッド初監督作でかつオスカーでは作品賞まで獲っている今作だが、後年の「めまい」「サイコ」辺りと比べると比較的に存在感の薄い作品。
しかし内容はしっかり面白い。
最近はNetflixでリメイク作品も作られていましたが、どうしようかな。
とにかくおすすめの傑作でした。