だん

ノックは無用のだんのレビュー・感想・評価

ノックは無用(1952年製作の映画)
4.1
タイトルからコメディかと思いきや、ゴリゴリのスリラー映画です。
実質的にはこれがマリリン初主役になるのかな。とりあえず、初期ながらも素晴らしい演技を見せていました。

まだタイプキャストをされてなかったり、スター性が完成されてなかった頃だからこその控えめで美しいマリリンの魅力。本作では、結婚直前にフィアンセを失った女性を演じていますが、これがなんとも難しい、気の狂った主人公なのです。

物語の視点となるもう1人の主人公の男は、序盤には彼女に「思いやりがない」と振られ、その後には窓から見えるモンローを誘惑したり、そしてズカズカ部屋に上がったり、かなり嫌な性格に見えます。漬け込まれる田舎娘ネルが可哀想で「大丈夫か?」となります。しかし部屋に上がってから形勢逆転。モンロー演じるネルの不審さが見え隠れし、逆の意味で「大丈夫か...?」という展開に。ジェンダー観を利用した上手いトリックです。

まさかマリリンから狂気・恐ろしさを感じることがあるなんて思いませんでした。窓から身を乗り出す子供の背中にそっと手を置いたり、ブツブツと訳の分からないことを呟いたり、モノクロだからこそクラシックホラーのような上品な恐怖が生まれるのでしょう。
彼女のハイライトの入っていない瞳がまた恐ろしい。
それでも最後にはどこか、可哀想な少女に見えて仕方が無いのです。キャラクターに人情を吹き込むマリリンの技が、初期ながらもしっかり確認できました。

共演のアン・バンクロフトも最高。マリリンとは正反対のインテリブルネット美人で痺れます。歌も上手いし、本作の世界観をお洒落に構築している一人だと思います。

マリリンの出演作の中では一番の脚本だと思いました。ロッテン・トマト100%も納得のクオリティです。
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