Jeffrey

クリミナル・ラヴァーズのJeffreyのレビュー・感想・評価

クリミナル・ラヴァーズ(1999年製作の映画)
4.5
‪「クリミナル・ラヴァーズ」‬

‪冒頭、目隠しされた男の描写。
2人の関係、殺人、逃避行、森の中、犯罪、扉、自由、儀式、誘惑と欲情、脱出と祝福、監禁、童話の様な光景、回想で明らかになる真実。今、おとぎ話の終わりが迎えられる…

本作は1999年ベネチア国際映画祭に出品され、後に東京国際映画祭にも出品されたファンタジー映画でありSM映画でフランソワ・オゾン監督の禁断のティーンエイジによる犯罪を過激にそして幻想の世界へと誘ったインモラルな17歳を描いたタブー映画で、かなり強烈なドラマだ。

冒頭からかなり引き込まれる映像だ。

男性が目隠しされ女性が彼に質問する。
続いて青年2人の描写に変わり女子高生の事を話、戯れる。

次のショットで男性のズボンを下ろして男性の陰部を写真に収め彼はとっさに飛び上がり彼女に襲いかかりフィルムを奪う。

続いて違う場面で他の男女が映される。
シャワールームで女と男が性行為をしているのを影から目撃した青年が男性をナイフでめった刺しにし、その場は血に染まる。

それはその男女の策略である。
こうして死体を布に包み、車のトランクに詰め込み、殺人犯の逃亡生活が幕を開ける…

この若いカップルはその後に強盗までしている。金を奪ったにもかかわらずショッピングモールで万引きをすると言う…ここでスコップを手に持つ彼女、これが暗示するものは観客はすぐに頭に思い浮かべる。

そこで挑発的な音楽が流れ、映像は夜道を運転する車内に変わる。

この映画の面白いところは人間を殺しといて、逃亡中の間に兎をひき殺し、そのウサギをきちんと埋めてあげると言う不可思議な行動をとる場面だ。

その前に2人が口喧嘩して兎を埋めようと言う決断に至るのだが…。

続いてカメラは山奥の森へと観客を誘いカップルは死体を引きずりながら木陰で座り休憩する。そこで接吻、土に埋める描写、第3者の枝を掻き分ける腕の描写が映され、不安が一気に積もり始め、ミステリーの世界へと変わる。

続いて河に止めてあったボートに乗り込み河の流れに身をまかせ2人は仮眠をとる。

翌朝、2人は食料を求め森を彷徨う。
そこで一軒家を見つけ侵入する。そこの家主に猟銃を向けられ2人は地下室へ閉じ込められる。

そこで回想が始まり、この殺人がなぜ起こされたかを観客に知らせる。時は現在に戻り、家主の男がカップルの男性を地下室から上げ、彼の顔を触る。続いて青年は裸になった男の体を洗い始める。ここで絶対服従の精神がうかがえるようになる。この場面はかなりシュールだ…

次は青年が裸になり巨大バケツに入り家主に体を洗われる。それを扉から見守る彼女、首輪をつけられ青年は家主と共に外の森へ出かける。

続いて森で狩った兎を調理し、男と2人で食卓で飯を食うも、彼女には男が与えなかったので夜な夜な彼女に食事を与える。

食事シーンの青年リュック役のジェレミー・レニエのクローズアップは絵になる。彼を初めて知ったのはジャン=ピエール・ダルデンヌ兄弟のパルムドール受賞作「ある子供」でだ。

この映画、余談になるが地下室の扉から顔の半分(目元のクローズアップ)がサム・ライミ監督の「死霊なはらわた」にそっくりだ。

そして物語は過激さを増し、家主が青年とベッドを共にし、手淫し始める…そして回想へとカムバックする。

この時点で冒頭のカップルの殺人、特にリュックの殺人動機が明かされる。

続いてパンツ姿の青年に家主が食事を口に運ぶ。軈て、隙を見て家主を殺そうとするが家主に見つかり物語は佳境へと向かい始める…と結構詳しく話すとこんな感じになるが、肝心なオチを言うことができない。

いや〜中々インパクトあるショットだらけで、凄い映画を見たと終始思わせられる彼の傑作だと思う。

だからこそ最近の彼の作品を評価できない。

この頃はグロテスクで挑発的で問題作を撮り続けていてくれてすごく画期的で素晴らしいものがあったが、もっと強気で映画をとって欲しい…

彼の作品で最後に良かったと思ったのは05年の「ぼくを葬る」だ。それ以降は微妙か普通レベルに留まる…

本作の好きな場面では2人が滝に打たれながら裸になり、川で泳いで接吻して岩場で太陽の光にあたりながら性行為をし、愛し合う場面と壮大な音楽、大自然、そして可愛らしい小動物と共に映される一連の流れはとてもメルヘンでファンタジックで美しい。

その後、うって変わって警察犬と複数の警察官に森の中を追跡される迫力ある手に痩せ握るシークエンスは見所だ。で、衝撃的な結末が殺された青年の眼差しと共にまるで復讐を成し遂げたかの様な演出で地獄の大団円を迎える…

正にヘンゼルとグレーテルの物語だ。

‪寓話の世界観を作り出すのが上手い監督で、平凡な日常から非現実的な生活へと一変して変わる感覚や、十代が起こす事件からのインスピレーションを受けたと思われる社会派ドラマに恋人の逃走劇を含め、童話の要素も織り込んだシュールな本作の何が凄いって

冒頭は彼女が主導権を握り泣きじゃくる彼氏をなだめて忠実に利用していたが、森の中に入って監禁されてからはそれが逆転となり、主導権を握ったのは彼氏でパニック状態の彼女をなだめ始める。

それに加え森に住む男に女は監禁され飯も与えられず、青年は男の性の対象になり、犯されると言うとんでもない事件が起こる…

更に言えば元々ストレートだった青年が、実は自分は同性も愛せると自覚し始める所も驚きの一場面である。

因みにエンドクレジットのキャスト名のカップルの苗字がレニエとなってるが偶然か…兄妹じゃないよな。

それともう1人の主人公である森の家主役を演じたマノイロヴィチが迫力ある熊の様な大柄の男を見事にこなしていた。

彼と言えばクストリッツァ作品の常連だな。

無垢と残虐性を描いている分、やはりまっとうに生活してる我々からすると主人公2人に感情移入がしにくいものの、彼らの哀れみを感じる事はできるだろう。特に森の中に入ってからのシークエンスがそうだ。

これは是非ともBD化してほしい映画だ。‬

最後にこのDVDに収録された僅か4分間の短編映画「アクション、ヴェリテ」に言及すると、美青年2人と少女2人でとある告白ゲームをする場面を固定ショットでひたすら役者のクローズアップで終わる。

‪物語は男の子と寝た?寝たわ。嘘よ。から始まり、実行と告白を選ぶゲームを行っており、たわいもなく見えるが性的な香りがし始める。それは足を舐めさせたり、性器に触ったり、接吻したり、デート話、性的な経験を話したり…だがたかが4分間の短編だが、中々のラストが衝撃的な作品だった。‬
Jeffrey

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