中尾

大脱走の中尾のレビュー・感想・評価

大脱走(1963年製作の映画)
4.2
この映画の素晴らしいところは、登場人物たちの中で「逃げること」そのものが目的化され、ただひたすら彼らが「逃げること」のみ描いている点にあると思う。

映画の舞台と同じ、第二次世界大戦下ドイツの収容所で過ごしたヴィクトール・フランクルは、「人間であるということは、自分自身ではない何かに向かって方向づけられ、秩序づけられているということ。」(『意味への意志』)と述べる。

「自分自身を超えて外へと指し向かう」存在が人間であるならば、本作で描かれていたのはまさに人間の姿であり、人間が生を全うする姿である。

「逃げること」そのものが「生きること」であるから、各々の逃げた先に何が待っていようが、彼らは等しく「人生を生きた」存在(フランクルの言い方を借りれば、「人生に意味を発見し、内なる自由を発揮する責任を果たした存在」)として描かれる。
一見状況に不釣り合いなほど軽妙な主題曲も、そういった作品のテーマ性に寄与しているようでとても好きだった。
中尾

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