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ヴァージニアンのkuronoriのレビュー・感想・評価

ヴァージニアン(1929年製作の映画)
4.0
「お前と俺が居るにはこの町は狭すぎる。日没までに町を出ていけ!」

辞典サイズの原作小説も読みました(笑)。史上初の西部劇は小説だったのですね。

その史上初の西部劇「ヴァージニアン」の映画化はサイレント時代からありますが、このゲイリー・クーパー主演のトーキー版が決定版とされています。原作者のオーウェン・ウィスターも気に入っていて喜んで観ていたと何かで読んだ気がします。
これもずっと観たいと思いつつ、半ば諦めていたのですが、いつの間にかDVDが発売!
観てみて納得。あの長編の原作をギュッと縮めてあるのにかかわらず、原作のまとう雰囲気をそのまま忠実に再現してあるのですね。
「いったいどうしたらこんなことができるのだろう!?」と興奮していたら、なんと監督はヴィクター・フレミングじゃありませんか!主演の方にばっかり気がいって全く気付かなかった。この後に「オズの魔法使」や「風と共に去りぬ」を撮るわけですね。改めて原作の魅力を映像として再現する能力に長けている人なんだと納得。

原作は、西部へ行ったことのない東部人に向けて1902年(OKコラルで銃撃戦があったのが1881年)に書かれたカルチャー・ギャップ小説です。初めて西部へ赴く東部出身の若い女性の視点で始まります。なので基本的に「西部は、素晴らしく広くてのどかな田舎で人々は素朴で…」といったスタンスで西部での生活が興味深く描かれていきます。そして素朴な牧童のヴァージニアンと恋におちます。しかし、彼の弟分はトラブルを抱えており…。
といった形で書かれている小説を原作にしているので、銃弾飛び交うマカロニウエスタン的なものを想像していると、全く違います。と、いうか、銃弾は殆ど飛び交いません(笑)。
例えば「荒野の決闘」でもそうなんですが、銃撃戦以外の部分(日常の生活とか)をきちんと魅力的に描くことで、そこに持ち込まれる一発の銃弾の重みが増すのだと思います。
まだ若い(「モロッコ」の一年前)ゲーリー・クーパーが、銃は上手いが殺しあいは素人の牧童にぴったり(しかし彼はなんだってあんなに足が長いんだ?)。クープのファンなら必見ですよ。
面白いことに、後年撮られたカラー版ヴァージニアン「落日の決闘」はいわゆる「普通の西部劇」的に撮られてるので、同じ原作で基本的に同じストーリーをなぞっているのに、最後「えっ?それで終わり!?」と、どうしても思ってしまいます。

あと「腰抜け二挺拳銃」で、町中をぐるぐる回って相手を探し歩く決闘は「ヴァージニアン」のパロディなんだと今になってやっと気が付きました(笑)。
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