塩野ダイ

DISTANCE/ディスタンスの塩野ダイのレビュー・感想・評価

DISTANCE/ディスタンス(2001年製作の映画)
3.7
ずっと観たかった是枝監督の長編3作目となる『ディスタンス』を中古で見つけて即購入。

『オウム真理教』を連想させるテロを起こしたカルト教団の加害者遺族の4人と、元教団メンバーの1人が、あるドラブルに見舞われ、主犯グループが潜伏していた森深くの部屋で一夜を過ごす事になる。

5人の役者はそれぞれの自分の出演の脚本のみを渡され、相手のセリフは知らされぬまま撮影に臨むというスタンスが取られたためか、人と人との絶妙な距離感や、探り合うような会話の辿辿しさが生々しい。

大切な人がいたであろ部屋で、それぞれが過去を振り返りながら、一人一人の素性がじわ〜っと見てえ来る。
親族や親しい人が、カルトと分かる前の『教団』に入ろうとしている時の、何とも心ここにあらず感と言うか、話の通じない気持ち悪さや不穏感は、実際に『オウム真理教』が流行っていた当時、リアルにそれを体感した人がいてたんだろうなと、ちょっとゾッとさせられた。森達也監督の『A』『A2』がより観たくなった。

ひたすらに淡々と、5人は人気のない澄んだ森に身を置き、過去との折り合いを付けていく。そしてラストにある『1つの事実』が浮かび上がった時、思わずもう一度見直したくなる。

今のある意味完成された是枝監督作より、『チャレンジグで粗削り』という言葉が似合う。手持ちカメラの映像が内容にマッチしてたように思う。個人的には寺島進とりょうの演技が良かった。
塩野ダイ

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