KAIRI

ナイト・オン・ザ・プラネットのKAIRIのレビュー・感想・評価

4.5
物語は夕方から始まり朝焼けで終わる。
1日が終わり、また1日が始まる。
ひとりひとりの人生、何が起こるかわからないままそれぞれの苦しみを背負って生きている。
今頃、作中の人物は何をしているのだろうか?
幸せなのだろうか?
と考えさせられる名作。

やはりジム・ジャームッシュはオムニバス形式が最適な構成だと再確認。
「デッド・ドント・ダイ」のように長尺で1本軸の話を撮るとかなり退屈になってしまう。
オムニバス形式であれば飽きさせないし、観てるとストーリー的にもそもそもジャームッシュは短編向きな気がする。
ストーリーとは関係なく各映像もキマりまくってるのでただの会話劇でも2時間ちょいが余裕でもつ。

全て夜の話というのはタクシー内で行われる第三者には行き届かない会話や会話の暗めの内容的にもベストマッチ。
タクシー運転手出なければ感じられない一期一会感も良い。
話が進むごとに夜へ夜へと深くなっていき、それと同時に各パートに存在する“不安感”も増していく物凄く興味深い構成。
場所は違えど一晩の話にするつくりも完璧。
夜のアングラな闇の雰囲気と昼の明るくて光のある雰囲気をしっかり別物にするためにも最初のLos Angelesの話はあのくらいシンプルで正解。

どの話にも統一してる要素がいくつかある。
“タクシーでの会話劇”というテーマ。
時計のアップ→地球儀→街の風景というオープニング。
カメラアングルは車内の会話の際は正面もしくは顔のアップ、外の絵に移れば風景を重視させる。
統一してる要素とは別で乗客と運転手の間になると職業や性格などの特徴で対比がある。
しかし、どの話もその対比に加えて地味に登場人物同士に共通点を加えてる。
その共通点や違いで意気投合したり反発したりするのもおもしろい。
一貫したテーマの中で対比と共通点を見事に絡ませるのはシンプルにみえて難しいので、その点はジャームッシュ監督の手腕かなと。

『Night on Earth』という原題を『ナイト・オン・ザ・プラネット』(惑星の夜)にしたのは凄いセンスだと思う。
意味は一緒だけど受け取り方がまるで違う。
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