ポンコツ娘萌え萌え同盟

雲がちぎれる時のポンコツ娘萌え萌え同盟のレビュー・感想・評価

雲がちぎれる時(1961年製作の映画)
3.4
お話が暗すぎて、全体的に沈鬱した空気感に押しつぶされそうだった。
道幅スレスレの峠道を通るバス運転手の男と、昔一緒だった女の再逢と関係を描いたメロドラマ。峠のトンネル開通間近という未来へと移ろいゆく世の中の要素と、対して過去と現在の複雑な人間の心情。
戦後という激動の時代に翻弄された市枝を演じた有馬稲子が暗く悲しい女の表情が多いのは勿論、
過去の姿と現在の市枝を介して夢から醒めないような三崎を演じる佐田啓二の表情も陰気のように暗くなるし、周りの人間の表情もだんだん沈む。序盤でかわいいバスガイドの女の子演じた倍賞千恵子すらモヤモヤした表情になっていく。
何よりこの沈鬱した空気感は照明の明かりと影にあると思う。演者の暗い・モヤモヤした表情や姿に強調し、対象人物にあてた露光と影が全体的に沈鬱した雰囲気を更に表出してると思った。

そんな暗い内容を通して、果たしてこの二人は再逢しない方が二人だったのだろうか。当たり前だが再逢しなければ勿論本作の物語は生じなかっただろう。
今のタイミングで再逢せず、トンネルが開通すればモヤモヤした心情の最中に危険な峠道という生と死の均衡で揺らされることはないだろうし、ましてや非情な現実を目の当たりにすることもない。夢は色褪せて完全に昔のことになったのかもしれない。

だけど本作は夢から完全に醒きれてない状態で出会えば一気に連れ戻される。
その中で再逢した結果、未来に進むか、それとも夢から醒めぬまま、それが描きたかっただろうな、佐田の表情と夜道を進むバスを見ながらそう思った。

ちなみに仲代達矢がカタコトの外国人役やってたんだけど、顔見てすぐ仲代達矢だ!って気づいた時だけ本作で唯一心の中で笑顔になった。