そりっどあいぼりー

フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告白のそりっどあいぼりーのレビュー・感想・評価

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エロール・モリスはマイケル・ムーアと並ぶ現代アメリカで特に影響力のあるドキュメンタリー作家と言われているのに、日本でちゃんとした媒体で観れる彼のドキュメンタリーはこのアカデミー賞受賞作、フォッグ・オブ・ウォーしかない。この映画では、ある男のインタビューが収められている。この男は第二次世界大戦で日本を空爆して10万人を殺したが(これについては映像中で本人が後悔している)、のちに世界で初めてシートベルトを車に装備して数多くの命を救い、さらにキューバ危機では世界の滅亡を救い、しかしその後のベトナム戦争のきっかけを作った。この映画ではマイケルムーアのように、ある意味で自分の言論を押し付けるような編集をするわけではなく、人物の主張からなるべく大きく外れないような編集で中立をなるべく保つとても古典的な編集方法なのだが、やはり題材の選び方とか、質問の方向性とかをかなりち密にコントロールすることで本人の言葉のゆらぎとか、言外の意味のようなものを観客に想像させることで鑑賞後の議論を促すような作りになっているのが上手いというか絶妙だと思った。

それにしても、ベトナム戦争の直接的なきっかけとなった魚雷攻撃は実際にはなかったという話には驚いた。