しんたにゆき

大列車強盗のしんたにゆきのネタバレレビュー・内容・結末

大列車強盗(1972年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

西部劇の王様ジョンウェインの、ものすごいアメリカ西部劇の老年期の終わり
これでわたしもやっと、皆が行くというジョンウェインのお墓まいりに行けるというものではないか。

昔の伝説の(!)列車強盗のときに奪われ隠されたという金塊を、頑固じじい(ジョンウェイン)率いる雇われガンマン達が探しに行く話。彼らの雇い主はその列車強盗の主犯の奥さんで、彼女は息子の将来のために夫の汚名(!)をそそぐべく、かつて夫が奪って隠した金塊を鉄道会社に返そうと金塊探しに乗りだした、らしい。
ロケ地は憧れのメキシコ。砂しかない。冒頭の給水塔と線路のシーンはめちゃくちゃハッピーの気持ちになれる。駅以外なにもない、砂がどこまでも積もってるだけの街。
(個人的なことになるけれども、ここであこがれの「砂漠」が繋がった感がすごかった。イージーライダーとヘルズエンジェルス(バカ)とサムペキンパーの、というかテキサスとメキシコの、マカロニウエスタンの、中国の、シルクロードの、エジプトの、アフリカの、全砂漠の全砂よ。砂漠のいいところはどの大陸にもあるとこ。その普遍性たるや。とりあえず手始めに鳥取砂丘から攻略していこうかな。こんなに愛で胸がいっぱいやのに砂漠は見たことすらない。)

ともかく、大列車強盗というタイトルをめちゃくちゃに裏切って、彼らは列車強盗をしない。昔誰かが列車強盗によって得た宝物を探しに行く。でもその意味はもうわかるでしょ?のやつ
映画のなかの台詞を引用すると、これ以上老いてほしくないという誰かの期待までわかってしまうくらいには老いたけれど、だからと言ってすぐに死ねるわけではないし、でももう列車強盗を企てるような歳でもない。
彼らはやっと手に入れた金塊さえも、その雇い主である奥さんと息子の将来、つまり未来の誰かのためにあげちゃうという、すごい西部劇の歴史を象徴するやつ、クリントイーストウッドがもうちょっと後にブロンコ・ビリーとかでやるやつ(サンダーボルトとかもさ)。マカロニウエスタンではミスター・ノーボディ。

でもすごいのは、最後にそこからさらにもう一回価値とか意味が転換するところ。プライドの象徴として白旗をあげてしまうところ。みんなの顔必見。これまでこれをみてきた人が瞳に涙をちょっと溜めて大歓声をあげるとこまでみえる。最高。