Shun

ファイト・クラブのShunのレビュー・感想・評価

ファイト・クラブ(1999年製作の映画)
4.5
消費に囚われるな、
ケンカをしろ、人間性を主張しろ。

ホセ・ムヒカ大統領の言葉を思い出した。市場経済は市場社会を生み出し、我々はそれをコントロールできていない。我々は発展するために生きているのではない。幸せになるために生きている。

んー、幸せになりたいから消費するんじゃないのか?より豊かになりたいという願いが消費行動に現れている限り、消費もまた人間性に富んだ行動だと思うんだが、違うのかしら。

あー、でもその消費が市場社会によってもたらされた過剰消費なら話は別なのか。なるほど、タイラーはそれを言っていたのね。

この手の議論はよく目にするので、メッセージ自体に新鮮さはなかった。しかし、人間性の主張は「ケンカ」という手段だし、二重人格という難解で線密な脚本構成、それに伴う丁寧な伏線回収、終盤にかけての盛り上げと、ラストシーン。そうラストシーン。これほどメッセージ性が込められた「美しさ」は見たことがなかった。感嘆。

なによりこれだけ重いテーマなのに、終始コメディチックに進んで行く。エドワードノートンやヘレナが醸し出す闇と、それとうまく調和しつつ、明るい空気を吹き込むブラピ演じるタイラー。絶妙なキャスティングと、役者の味が際限なく発揮されている。至極の一作。
Shun

Shun