百合

グッド・ウィル・ハンティング/旅立ちの百合のレビュー・感想・評価

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名作ちゃんと見ようシリーズ

ハタチそこそこでこの脚本書いたんですねマット・デイモン。天才。まあいかにもハリウッド的ではあるが。
擬似親子とも呼べるふたりの人生は綺麗に対称性を持っており、彼らのターニングポイントはズバリ‘愛’というところがもうお手本という感じですね。過去に激しく愛した人がいたもののそれを失い心を閉ざして暮らすショーン、過去の悲惨な思い出から愛を怖がり世界を拒絶して暮らすウィル。セルフネグレクト状態のこの2人の近似性は、荒れた家の様子からも明らかにされます。
単なるトラウマ克服話ならここまで取り上げられなかったのでしょうが、やはりここにウィルの才能という斜めの線を入れてみたところがこの脚本のほかと違うところです。‘持つ者’ゆえの苦しみみたいなものを描くことで、ウィルが愛を‘選び取った’様がより強烈に演出されるわけです。
「話していて刺激的なのが親友だ」というようなロビンウィリアムズのセリフがいい。それを受けたかたちでのベンアフレックとマット・デイモンのシーンで、ベンアフレックが「おれは親友だから」と彼を突き放すのです。「お前は俺たちには何も言わず、出て行ってるかもしれない。そう思う10秒間が一番エキサイティングだ。」これが親友ですよね。
そしてカリフォルニアへ走る車をバックにエンディング。車や道路(や鉄道)というのはアメリカでもどこでも自由や希望の象徴なのです。人間が自分の力で世界を小さくした証ですから。‘行こうと思えば、旅立つことを選べばどこへでも行ける’こと。‘愛’と並び立つもうひとつの主題であるこの映画のラストとしてこれほどふさわしい情景はないでしょう。
全体的に非常によくできた作品だと思います。
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