この主人公は誰のことも何も理解できていない。理解できないというよりかは共感する力がない。
だから悲しい時にわざとらしく海へ行く必要がある。疲れ果てるまで自分が悲しいということを発散して、なんかセックスしたらケロッとしている。つまりこいつの心や体は健康すぎる。
こんなにも健康すぎる我々には自殺した人やメンヘラちゃんたちが何をどう苦しんでるのかなど分かりようがない。
掌をガラスで切ったのはある種の自傷行為だったけど、しかしそんな傷もすぐに治るし、その過程においても手掛かりは特に掴めなかった。
散々引き摺り回した痛みなんかが、簡単に癒えてしまう。それはいいことなんだけど。
だから僕はどこにいるんだろうって台詞は虚しい。
あとレコード屋の壁にエイプリルフールとパワーハウスの本物っぽいのがあるのがウケた。
フォークシンガーのアー写みたいにそこら辺の草むらに座り込んだりするのがなんか羨ましい。やっぱりコンクリートジャングルでヒッピーに最も接近しているのは東横キッズなんだろうと思った。みんな彼らを嘲笑いながらほんとは羨ましいはずだ。