HirokiYamashita

ノルウェイの森のHirokiYamashitaのレビュー・感想・評価

ノルウェイの森(2010年製作の映画)
3.4
この1週間爆速で原作を読んだ上での視聴。
Filmarksでの低評価は納得できる。
そもそも村上春樹作品が苦手な人、その上でノルウェイの森の登場人物たちに共感出来ない人、最後に原作との比較で薄っぺらく拒絶する人…。

村上春樹自身も、「小説が十万部売れているときには、僕はとても多くの人に愛され、好まれ、支持されているように感じていた。でも『ノルウェイの森』を百何万部も売ったことで、僕は自分がひどく孤独になったように感じた。そして自分がみんなに憎まれ嫌われているように感じた。」と語っている通り、本来であれば大衆に受容されるはずがなかったのかもしれない。

奇しくも、歴代小説発行部数を塗り替えたのは『世界を中心に愛を叫ぶ』になるらしいけど、どちらの作品も共通して「純愛」や「死」のテーマを悲劇的に描いているものの、その心象は対極とも言える。

個人的に、セカチューがドラマティックで陽の愛ならば、ノルウェイの森は超絶リアリズムな陰の愛に思える。

日常に溢れている男女間の心理的なミスマッチは、ワタナベと直子の関係が体現していて、特に直子の「公正さ」に対する期待はハッとさせられるものがある。
主題が複雑で色んな切り取り方があるだろうが、この点だけでも妙にリアリティーがあり、考えさせられる。

ただ、これほど繊細な内容を映画化するには相当ハードルが高いと感じた。人に薦められるかと問われると悩ましい。

<以下、印象的セリフメモ>
・つまりさ、可能性がまわりに充ちているときに、それをやりすごして通りすぎるというのは大変にむずかしいことなんだ

・自分は自分にあまりにも慣れすぎている

・金持ちの最大のメリットは、お金がないと言えること。

・自分のことを普通という人間ほど信用しちゃいけない。