93~94年にかけてOVAシリーズとして展開された方の集大成的作品。とはいえ、後に05年に仕切りなおしで始まるTVシリーズもメインスタッフが継続しているので、差異の判別は難しいが、この劇場版はひとまずの区切りであるのは間違いない。内容は月に封印されていたベルダンディーの師、セレスティンが引き起こす神の構築したシステムと世界への反逆が物語の軸となっている。そこに巻き込まれるのが螢一とベルダンディーの関係。二人の相思相愛の関係をセレスティンに漬け込まれてしまうわけだが、どんな変化があろうとふたりの絆は強固であり不変であることが物語の突破口であり、同時に物語の根幹として成り立っているように感じられた。本作のテーマ立ては「愛」であり「理不尽な世界の仕組み」なのだろう。セレスティンは神属ながら、種族を超えて愛し合う恋人たちに降りかかる理不尽を正そうと行動を起こすわけだが、ベルダンディーたちはそれらすらも受け入れて、お互いを信じあい共に寄り添うことで乗り越えていく。そういった作品の性質上、アクション的なエンターテイメントの部分を期待してしまうと弱い作品だが、作画や演出の方向性も二人の信頼関係や強い結びつきに説得力を与えるために注力していた節もあり、日常描写が非常に丹念に描かれているし、キャラクターの生きる姿を活写しているという点ではかなり作りこまれている。手短にざっくりといってしまえばいわゆる「セカイ系」の反対を描いているとも言えて、男女の強い結びつきがあればこそ理不尽な世界は美しい姿を見せてくれるし、幸せを与えてくれる事を描いていているようにも感じる。だからこそ、世界の危機がメインに描かれるのではなく、あくまで螢一とベルダンディーの関係が主軸に置かれるわけなのだ。そういった点で言うとやはりクライマックスの三女神の合唱シーンなどは彼女たちの神々しさを感じられるし、見る者を浄化していくような名シーンにも思える。とはいえ、エンタメ映画的なメリハリには欠けるため、途中のダレ場が長いが玉に瑕だろうか。しかしそこの粗に目をつぶっても、気にならないほどには「ああっ女神さまっ」の原作の魅力を引き出している作品でしょう。