ポップと水玉

ヤンヤン 夏の想い出のポップと水玉のレビュー・感想・評価

ヤンヤン 夏の想い出(2000年製作の映画)
5.0
素晴らしい。なんて素晴らしい作品だろう。

「真実の半分ってあるの?」というヤンヤンのセリフが印象的。自分で見られるのは物事の半分に過ぎない。自分で確認できるのは、自分自身の正面だけだ。しかもそれは、鏡に映った姿である。本作には、窓や鏡が頻繁に登場する。後ろ半分は、誰かに見てもらうしかない。真実は他者とともに見つけるもの、鏡像と他者の目を通して到達するものなのだ。自分で直に確認できるのは、ほんの一部でしかない。後姿を写真に収めてまわるヤンヤンは、それを教えてくれるかのようだ。
かつて夫は愛する人のもとを去り、そして今は妻に去られる。愛する人と再会し、けれどその人にも去られてしまう。仕事も上手くいかず、孤独になったところに妻が戻り、「物事は複雑じゃない、複雑に見えるだけ」という真理に二人で到達する。夫婦の絆は祖母の死をきっかけに戻る。結婚で始まり、葬式で終わる物語。娘や義弟の周囲にも、誰かのもとを去ったり去られたりするドラマがある。そのたびに彼らは真実に近づいたり遠ざかったりする。真実は愛と言い替えることもできる。傑作。