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クレイマー、クレイマーのSHOHEIのレビュー・感想・評価

クレイマー、クレイマー(1979年製作の映画)
4.3
ニューヨークに暮らすテッド・クレイマーは仕事一筋の会社員。しかしそんな彼に愛想を尽かした妻ジョアンナは5歳の息子ビリーを残して家を出ていく。慣れない家事と育児に奔走し家庭と仕事の両立を試みるテッド。やがてビリーとの間に親子の絆が芽生え始める。そんな時、ビリーの親権を主張するジョアンナが彼の前にふたたび現れる。

原題は『Kramer vs. Kramer』。同じ姓を持つ者同士の争い、つまりは親権をめぐる裁判を描いた作品。主人公を演じたのはダスティン・ホフマンで本作でアカデミー主演男優賞を初受賞。また彼の妻を演じ、現在最もオスカーノミネートされた記録を持つメリル・ストリープもこの作品でアカデミーを初受賞した。そして彼女らの息子、ビリー役のジャスティン・ヘンリーは本作が公開された当時8歳でアカデミー助演男優賞のノミネート最年少記録保持者となった。上記の記録からも分かるとおり演技面は盤石で、家庭内不和というテーマを説得力を持って描いている。ダスティン・ホフマンは家事や子育てに不器用ないわゆるダメ親父を演じているが、見進めるうちに今まで見えてこなかった子どもへの愛情が伝わってきて次第にかっこよく見えてくる。メリル・ストリープは感情が不安定な母親を演じ、時に涙を流すシーンはさすがの演技力。離婚は本人たちだけの問題ではない。彼らの子へのダメージも計り知れない。息子ビリーは母親が突然姿を消したことに戸惑いながら彼なりに心の整理をつけていく。両親の都合で振り回され、幼いながらに状況を飲み込もうとする姿をジャスティン・ヘンリーが好演。繊細かつ重たいテーマながらタッチはハートウォーミング。やはりテッドやビリーに感情移入しながら見てしまうし、特にラストの朝食作りのシーンは感慨深い。そこからの思いがけないエンディングにはホッとする。ヒューマンドラマとして過不足ない、洗練された出来。
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