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他人の顔のYUIのレビュー・感想・評価

他人の顔(1966年製作の映画)
4.1

㊗️300本鑑賞

記念すべき300本目はずっと見たかった他人の顔🎞 映画のワンシーンに英語訳を添えた画像を上げている海外のインスタでこの作品を知りました。そのワンシーンだけで、あ、この映画見たいわ‥と興味が湧き、検索‥でもTSUTAYAですら扱っていない‥どこで見ればいいのだ!と思っていたら、まさかのYouTubeにアップロードされていたので仕事終わりや夜勤前の合間を縫ってじっくり鑑賞しました。


いや、自分の大好きなジャンルの映画過ぎて、、、台本が欲しいくらいです。時計仕掛けのオレンジとか、セリフの一言一言に重みがある映画って、聞いているだけで素敵だし、新たな感性が生まれる感じがして好きなんですよね。この映画も、返答やさりげない一言ですらお洒落で深い言い回しだから、何度も聞きたくなる。

⚠️以下作品の内容を含みますのでご了承下さい⚠️


火傷で顔面が爛れ、心を閉ざし包帯を巻いて生活する男性。とある精神科医に出会い、全くの別人の顔である仮面を作ってもらう訳だが‥

私てっきり、仮面の男性がカッコ良すぎるから、仮面を被って妻を誘惑すると、妻が仮面の男性を好きになってしまい三角関係になってしまう、という意味かと思ったのですが、、違いましたね。(安直な考え‥)
三角関係にさせたのは主人公本人。妻は男性を同一人物と分かっていたわけで、仮面を被り新たな人格を形成した主人公が1人で二つの感情を生み出してしまった。

物語はわかりやすく本物の仮面を用いていましたが、結局人間は誰しも仮面を被っており、その時々に新たな顔を生み出す。仮面を被り続けると、本来の自分が分からなくなり、よくない表現ですが主人公のように爛れた顔、自分が抽象化され分からなくなってしまう、と感じました。

そして仮面を被ると、仮面は偽りなわけですから、相手も傷つけてしまいます。

悲観的な考えに至った時、仮面を被らない努力をしなければならない、と、綺麗事を言いたいところですが、それが難しいから人間は未だ仮面を被らない策を見出せていません。現に1966年に製作されたこの映画に共感出来るわけです。

仮面をかぶると、悲観的な感情が封じ込められ、仮面に「酔う」ことで浮かれた感情、そして気分高揚、軽い躁状態となります。

怖いのは、仮面をかぶることの善悪が判断できない事です。物語も最終的に主人公が医師を殺したことで終わるわけですが、そのあとどのような生活を送ったのか、想像しかできません。悪の道に染まり捕まるかもしれないし、新たな人生をスタートさせ自由な生活を送るかもしれない。


自由は孤独



白黒映画ですが、不思議な処置室と、静止画が時折含まれている所、奇妙な音楽が良かったです。ただ、顔に火傷を負った女性のシーンと、医師の妻?の存在が分からなかった‥他の方のレビューを読みましたが、同じ疑問を抱いている人が多いようです。後で調べようと思います🔍

あと、主人公の顔と声がとても良かった‥。堅い話し方も好き。

余談ですが、精神科医が仮面の髭を決める際、しれっと唇の上に貼っていて笑いそうになりました笑


原作が読みたくなったので、自粛解除されたら書店で購入したいなと思います。作者の他の作品も読んでみたいです。
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