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新吾十番勝負 完結篇のodyssのレビュー・感想・評価

新吾十番勝負 完結篇(1960年製作の映画)
3.0
【子供のころ見たかった映画】

子供の頃に見たかったけど見に行けなかった映画というものがあります。私にとってこの『新吾十番勝負』はそのひとつ。最近BSで放送されたけれど、録画し忘れたりして(汗)、完結篇だけかろうじて録画して見ること出来ました。

葵新吾(大川橋蔵)は八代将軍将軍吉宗が将軍になる以前にもうけた庶子という設定です。この完結篇では彼は四国に渡りますが、そこで武士に追いかけられる絵師だとか、無実の罪をかぶせられて切腹を命じられた武士を救ったりするものの、結局はそれがもとで人を斬り殺してしまい、父たる将軍との対面を控えながら、山奥に籠もって剣の再修業する道を選ぶ。将軍は一計を案じ、全国の流派を代表する剣豪を集めて御前試合を行うこととします。新吾も師の流派を代表して江戸での試合に臨み・・・・。

初めて見て、まず葵新吾がいつも派手な服装で旅をしているのが気になりました。将軍の子息なのでカネは持っているし通行証もあるからあまり苦労がないのは分かりますけど、もう少し地味な恰好のほうが目立たないし・・・・なんて思うのは野暮なんでしょうね。ヒーローは美男で格好良く、服装も派手でなくてはならないんでしょう。

かっとなって人を斬り殺すシーンもあるものの、基本的に彼は峰打ちで相手をやっつけています。気絶させるだけで殺さないという平和主義戦後ニッポンを体現するかのよう。この峰打ちって、実際はあり得ないらしいですけどね。(そんなことをすると日本刀はすぐ折れてしまうらしい。)でもむかしNHKでやっていた「月下の美剣士」という時代劇でも、ヒーローは峰打ち、ということになっていた。一時期流行したんでしょうかね。この辺、詳しい方はご教示をお願いします。

最初の頃はどうだったのかは知りませんが、この完結篇では葵新吾が将軍の子だということは諸藩に知れ渡っています。だから一種の水戸黄門で、諸藩の武士たちは相手が誰だか分かると一応ひれ伏すのですが、土壇場で「構わぬ、やってしまえ」となるのも水戸黄門と同じ。

葵新吾は白馬に乗っています。他の武士はふつうの茶色い馬なのに。ヒーローは白馬で駆けつけなくてはならないというお約束ですね。先日見た『独眼竜政宗』(昭和34年)でも政宗は白馬に乗っていたっけ。製作は本作品と一年違いだから、同時代と言える。身分ある若様は白馬に乗らなくてはならない・・・・白馬の記号学か(笑)。

ヒーローは複数の美女から惚れられて・・・・というのもお約束ですが、ここでは正体不明の女すり(丘さとみ)から惚れられ、言い寄られるシーンが見どころです。そして彼女の正体は実は・・・・となります。

でも最後は・・・・なんですよね。これまたお約束。八方丸く収まり、とはならない。ヒーローはつらいよ、でしょうか。

今見てちょっと物足りないと思うのは、最後の御前試合のシーン。どの試合も非常にあっけなく勝負が決まっちゃうんです。もう少し丁々発止とやりあってから決まって欲しい。
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