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ジョニーは戦場へ行ったのタロウのレビュー・感想・評価

ジョニーは戦場へ行った(1971年製作の映画)
4.0
『JOHHNY GOT HIS GUN/ジョニ-は戦場へ行った』




  👀👀👀

 "生き地獄"とはまさにこの事。
辺りはただひたすらに暗く、冷えている。時折誰かが入ってきて自分の身体に触れていく。一体何をしているのか?気になって仕方ない。だが声をかけようにも、話を聞こうにも、様子を見ようにもあるはずの感覚がない。触れて確認しようにも両腕がない、立ち上がろうにも両脚がない。彼に残されたのは四肢を失った身体とえぐれた頭部、そして鮮明な意識だけだった。

 月並みな表現になってしまうが、戦争行為が正当化されることなど決してあってはならない。だが"お国のために”精神を持つこと、戦死=祖国のための名誉ある死というのが至極当然だったであろう戦時下においては、一市民がどう声を上げようとも1人、また1人と戦地に派遣される若者の数が減ることはなかったはず。戦地に向かうジョーの身を案じ、何度も何度も引き留めるカリーンの姿には否が応でも胸が痛む。彼女と同じ悲しみを抱え、愛する夫の帰りを待ち続けた女性が一体何人いたのだろうか。勿論、夫と同じように出兵は名誉あること!と士気高く送り出した女性も多かったはず。戦地に向かう列車に乗る直前のシーンでは、ジョーとカリーンの周りはかなり盛り上がっていた印象でアメリカ国旗がはためき、歓声が飛び交い「いざ行くぞ!」と明るい雰囲気。ただそれ故に、一歩離れたところに立つジョーとカリーンを包む悲しげな雰囲気が際立つ。それはジョニーがゆっくりと歩を進め、列車に乗り、カリーンにピースサインを送るまでずっと。

 国のため国のためというが、国のためなら市民がどうなってもいいのか?戦争行為に対する怒りのメッセージと共に、"過剰な抑圧"を強烈に描いたような内容は是非多くの人の目に触れてほしい。ジョーが全身全霊で伝えたメッセージがいとも簡単に握りつぶされてしまう様は今の時代にもどこか通ずるポイント。声をあげ続けなければ思いが届くことはないが、声をあげ続けても一瞬でかき消される現状に何を思えばいいのか、、

 晴れた日に晴れてよかった!と全力で喜べる自分になりたい。些細な事を全力で喜べる自分になりたい。

◎印象的アイテム(台詞)◎
・赤いローブ
・注射器
・釣り竿
・モールス信号
・"Merry Christmas"
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