あるてーきゅう至上主義者

天井桟敷の人々のあるてーきゅう至上主義者のレビュー・感想・評価

天井桟敷の人々(1945年製作の映画)
3.8
ドロドロのドロドロのドロドロの愛憎劇。詩人がとても詩人と思えないほどの暴れん坊だけど、それはそれでいいのかな。

フランスの半分がヒトラーの統治下で、もう半分のヒトラーの傀儡政権だったヴィシー政権下で作られた作品。戦時中の物も人も絶対的に不足している中、よくぞこれだけの映画を作れたものだと驚嘆すること間違いなし。冒頭のパリの街を再現した超大規模セット、凄まじい数の街を行くエキストラたち。もちろん特撮などの技術も無い頃だから、すべて本物。フランス人の意地と誇りが撮らせた本物の芸術作品。

話は数十年に及ぶ二重の三角関係と、その中でうごめく演劇界の役者たちの物語。脚本が緻密な上に、セリフのひとことひとことが、まるで小説のよう。演劇と役者たちへのオマージュであるとともに、天井桟敷に生きる庶民への応援歌のよう。

「天井桟敷の人々」による「金返せ!」コールに笑った人は多い気がする(笑)